神様の言う通り
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***矢張の証言
あの自信を服にして歩いているような御剣が、たかだか女1人でまごついているって聞いてさ。これはまさしく俺の出番だと思って、このコンビニにやって来たんだよ。
あ?誰から聞いたのかって?あれだよ、ほら。イトノコのオッサン。何か「この際手段は選んでられないッス」とか妙な事言いながら…っていうか、何気に失礼じゃねーのか?こーゆー場合は俺に真っ先に言うもんじゃねーの?なんたって、俺は愛の伝道師なんだからな!
それで、昨日だけどその御剣の様子を見にこのコンビニに来たんだけどよ…うーん、ありゃ相当重症だな。アイツなら俺から声かけなくても、店内を見りゃ居る事に気付くだろうって思ってたのに、本気で気付かないのな。マジで片想いのあの子しか見てねぇの。重症っつーか、重体?アイツののめり込み具合も、それでいて何もしないっつーのもな。
だから、ヒトハダ脱いでやったんだよ。俺が。
***
「…だから、何した?」
「おう。アイツの危機感を煽ろうと思ってさ。あの子、軽くナンパしてみた」
「………はぁ!?」
「狙っている獲物を横取りされるみたいな?そーゆー危機感を煽れば、アイツも重い腰を上げるだろ?大体、30ももうすぐ半ばだっつーのに、何モジモジちんたらやってんだよあのバカは」
「………よく殺されなかったな」
「まぁでも、今まで見た事ねぇくらい、おっかない顔してたけどな」
「………」
***矢張の証言・続き
俺は手ぶらで鷹宮ちゃんがいるレジに近づいた。あ、名前とかはイトノコのおっさんから聞いてから、誰なのかすぐ分かったんだ。
【いらっしゃいませー】
【いらっしゃいましたー…ねぇ、鷹宮ちゃん】
【はい?】
【俺。俺は矢張政志ってんだ。ヨロシクな!】
【はぁ】
【しっかし、こうやって近くで見ると…鷹宮ちゃんって、すっげーカワイイーな!ねぇ、鷹宮ちゃんは今いくつ?】
【は、はぁ…あの、20ですけど】
【マジ!?うはー…若けぇ〜】
多分一回り下だなーとは思ってたけど、14も下とはね。若い女がイイってのは分かるけどよ、御剣もやっぱ男なんだな。
【ねぇねぇ、仕事は何時に終わんの?終わったら俺と一緒に遊びに行かね?】
【え、えっと…】
【俺、暇だし終わるまで待ってられるしさー。ケーキ好き?何か食いながら色々話を……】
【えー…っと】
***
「何か…ナンパの仕方が雑だな」
「テメー!愛の伝道師を馬鹿にすんなよ!本気でナンパする時は、あんなバカっぽいやり方しねーよ!」
「え?本気じゃなかったの?」
「あったりめーだろ?言ったじゃねーか。わざとナンパして御剣の危機感を煽るのが目的だって。本気でナンパしてあの子が俺に惚れたらマズイだろ?」
「惚れたらね」
「ムカつくなオメー…ま、別にいいけどよ。そしたらあの御剣のヤツ、いつの間にか俺の後ろに立ってたんだよ」
***