神様の言う通り

□08
1ページ/4ページ


※今回の話は、オチがだいぶシモいです。オチだけとは言え苦手な方は、そこらへんを注意&了承してください。






何といっても、大事な親友の為だもんな。

この俺がヒトハダ脱いでやるぜ!それであっという間にハッピーエンドだ!



***



「あれ?」

最初の4日間張り込み以来、1ヶ月ぶりくらいにあのコンビニにやってきた僕は、ちょっとした違和感を覚えて思わず小首を傾げた。

今の時間帯――…朝方なんだけど――…に、絶対このコンビニにいなきゃいけない人間の姿が見当たらない。どれくらい絶対かというと、100%なんていう数値をぶっちぎっても尚計り知れない…所謂、必然に相当するほどに絶対。

「…入れ違いになったかな?」

張り込みをやめた後も、逐一もたらされていたイトノコ刑事による御剣情報によれば、大体この時間帯にいるはずなんだから、入れ違いっていうのも考えにくいんだけど…でも全く可能性がないっていう事もないのも事実ではあるから――…

「おーい。何朝っぱらから難しい顔で考え込んでんだよ」

「!…って、何だ。お前か」

突然、後頭部をコツンと小突かれて慌てて振り返ると、そこには朝からあまり見たくない顔があった。

「珍しいな、矢張。こんな朝早くに活動してるなんて」

「久しぶりの挨拶がそれかよ。俺はお前らと違って朝早くから夜遅くまで、それはそれはがむしゃらに働いてんだからな!」

「…いや、僕も仕事が立て込めば徹夜もざらだけど――…」

どうも弁護士を公務員みたいな、安定した職業的感覚で捉えらている様子の矢張に、僕は溜息をついてみせた。特に僕の場合は個人事務所だからサラリーマンみたいにあれこれ付いてるワケじゃないし。ぶっちゃけ、肩書きだけが御大層なだけで実態は自営業と一緒だと思う。

…まぁ、未だフリーターであれこれ職を渡り歩いているコイツに比べれば、遥かに安定はしていると言えるけど。

「ところで…お前のアパートって、ここの近くじゃないだろ?何でこんな朝早くにここにいるんだ?もしかして、ここで働いてるのか?」

「さすが成歩堂!…って、言いてぇところだけど、違うんだな。ちょっと様子を見に来たんだよ」

「様子?」

「おう。我らが出世頭の、検事局長サマの様子だよ!」

「………まさか、お前。知ってるのか?アイツが――…」

「おう!なんたって俺は恋多き男…そして愛の伝道師・矢張様だからな!御剣が片想いに身を焦がしてる事は、百も千も承知よ!」

力強く親指をぐっ!と立ててアピールする男を、僕は思わずじとっと見つめる。そうやって言えばカッコイイけどさ、コイツの実態を知ってる分、非常に白々しく聞こえる。愛の伝道師を豪語するなら、まずは自分の身を固めろよ(自分も人の事は言えないけどね…)

「それで、様子って…お前何をする気だ?」

「何をする気っていうかー…実は昨日、御剣と会ったんだよね〜」

「…………待て。お前、本気で何をした?」

てへぺろ、と言わんばかりに舌を出してニコニコと爽快に笑う矢張の口ぶりに、僕は目の前が暗くなる。これは……これは確実に何かしている。しかも、悪い方向に。

「お。成歩堂も気になる?俺様の愛のテクニックを!」

「お前のテクニックは全然興味ないけど、何をしでかしたのかは興味がある。いや、本当は聞きたくないけど、聞かないといけないと思っている」

「何、訳の分かんねぇ事言ってんだ…まぁいいや。じゃあ昨日のとっておきを話してやるとするかぁ!」

そう上機嫌に言い放つと、矢張は目をキラキラと輝かせて昨日の御剣について話しだした。



…ホント、悪気がないというか。100%善意だと思ってやるもんだから、尚更タチが悪くてややこしくなるんだよな。

コイツが首を突っ込むと……



***
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ