神様の言う通り

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***矢張政志の証言・続き



【貴様、何をしている】

【は?イっ――…イデでででででで…!】

アイツ、俺の背後を取るなり断りもなくいきなりこっちの耳を引っ張り上げてきやがったんだよ。あんな扱い、小学生ン時にお袋にヤられたっきりだし、それにゴツい男に全力で容赦なく耳を引っ張り上げられてよぉ〜…マジで取れたかと思ったぜ。

【な…何すんだよ!このバカ!!】

【それはこちらのセリフだ。鷹宮さんに…いや、他人に迷惑をかけるな。トラブルメーカーはトラブルメーカーらしく大人しく巣へ帰れ】

そりゃもうおっかねーっつーか…今まで見た事ないくらい恐ろしい顔してたよ。アイツが刃物持ってたら、俺、確実に刺されてたな。うん。

超ビビったけど、ここで引き下がったらこの愛の伝道師の壮大な計画が無意味になっちまうからな。俺も果敢に立ち向かったワケ。スゲー男らしいだろ?

【帰れはねーだろ!?人が好きでやってる事に口出しすんじゃねー!】

【だが、貴様は別だ。貴様が好き勝手な事をすると、あらゆる秩序が崩れる】

【わ、ワケの分かんねー事言ってんじゃねー!俺だって、一応中学は出てんだぞ!】

【……とにかく、出て行け。そして二度と近づくな】

【ちぇ。何だよ…んじゃ、鷹宮ちゃん!またな!】

【来るなと言ってるだろう!】

御剣のツッコミを受けて、俺はその場を離れたんだけど…あ。その後が気になったから離れたっていっても店にはいて、会話は聞いてたんだけどな。

【…大丈夫だろうか?】

【いえ。あの…今の方はお知り合いなんですか?】

【…………向こうが一方的に知ってるだけで、私は知らんのだ】

ひでぇ。小学生ン時からの離れがたい絆を、アイツは「知らん」の一言で片付けやがったぜ。大体、その離れがたい絆があるからこそ、こんなバカっぽいナンパまでしてみせたってのによー。

【そうなんですか?何だかお知り合いみたいだったから…】

【…――そ、その】

御剣のヤツ、急に俯いたかと思ったら頬を赤くしてぼそぼそ呟きだしたんだけど…

【その……突然割り込んできて、迷惑…だっただろうか?】

【え?】

【いや。その……だな。私は君が困っているように見えてとっさにあのような行動を取ってしまったのだが……き、き…君がその――…ああいうのが……た、た…たタ】

【た?】

【タイプ、だったのだとしたら……逆に私が君に……その、悪い事を――…してしまったのではと】

んな事を、アイツはモジモジと聞いててさ。いやー、話では聞いてたけどよ…あれ、誰が見ても片想いしてんだってバレバレだぞ。

【いえ。あの…本当に助かりました】

【え?】

【今さっきのあれ、ナンパ、って言うんですよね?私…初めてだったんで、どうすればいいのか分からなくなっちゃって…特に今、勤務中だし。相手はお客様だしで…】

【………】

【だから、御剣さんが来てくれて本当に嬉しかったです!】

【――っ!!!】

そりゃもう顔を真っ赤に茹で上がらせて、ずざっと半歩下がって驚いてたぜ、アイツ。でも一目見て喜んでんのが分かんの。尻尾とか付いてりゃ、ぶんぶん振り回してるようなイメージだな、ありゃ。



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