神様の言う通り

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狼とメイによる、鷹宮さんへの質問は続く。パンを選ぶ(フリの)私は、耳そば立ててその内容を聞いていた…盗み聞きなど品のない行いなのは重々承知しているが、彼らの会話の内容は私にとって非常に興味深く、そして酷く魅惑的で…私は訳の分からない背徳感に胸を軋ませつつも、2人の行為を止めもせずただ黙って聞いていた。

そこから分かった鷹宮さんの情報…フルネームと年齢と、パートナーの有無。そして彼女の大体の居住場所。もちろん、それは詳細な番地ではなく、朝日通りを過ぎた先だという大まかな内容ではあるが――…私のマンションとは反対方向なのだというのが分かっただけで、それだけで心が浮き立った。

「駅の近くではないのね。てっきりここまで電車か何かを利用していると思ってたのだけど。ここまではどうやって通勤しているのかしら?」

「自転車です」

「朝日通りのまだ先から自転車って…結構時間かかるんじゃないのか?」

「大体15分か10分くらいですかね?自転車だと電車賃、浮きますし」

「でも、雨の時は大変ね」

「そうですね。その時は雨ガッパで何とか…」

ふと私の脳裏に、雨の中を自転車で駆けるレインコート姿の鷹宮さんが浮かび上がった。雨足で灰色に流れる街の中を、レインコートを着た彼女が自転車に乗って駆けていく…なんという健気な姿だろうか。そのような苦労をせずとも、私が車で送ってやれるというのに――…!

「そういえば…最近、貴方の身辺で不審な事はなかったかしら?」

メイが問いかける。普通はそれを真っ先に聞くべきではないだろうかと思うが、そのお陰で手に入った様々な情報を思えば、目をつぶるのもやぶさかではない。

「そうですね…不審というか、不思議な事なら」

「ん?」

狼が眉根を寄せて鷹宮さんの話の続きを促す。

「もう2週間くらい前ですけど、突然沢山の花がお店に届いたんです」

「!」


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