恋愛無関心症患者のカルテ

□Last
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剛三氏との短いやりとりを思い返した御剣は、意識を現実へ向けた。唯は困ったような何とも言えない表情で、ゆっくりと溜息を付く。

「…そこで、土下座されました」

「そうか」

それきり黙り込んだ2人だったが、唯は御剣から視線を外すと窓の方へ顔を向けた。

「………ちょっと、戸惑いました」

「ム?」

「本人が土下座したなら、いろいろ思う事があったんでしょうけど……剛三爺は、私からすれば第三者ですから」

「………」

「だから…正直、困りました」

説明しにくそうに呟く唯を、御剣は暫く見つめる。きっと彼女も自分と同じ、説明しづらいもどかしい感想を剛三氏に抱いたのだろう。

「序審…」

「?」

「序審はもう、終わったんですよね?」

それ以上の話は避けたいのか、それとも続きが見つからないのか、唯は話題を変える。御剣は「あぁ」と短く返事をした。

「滞りなく、無事に結審した。結果は君が望んだ通りだ」

「…怪我さえしてなければ、傍聴する気マンマンでした」

呟きながら、唯は窓へ向けていた顔を御剣の方へ戻すと、もう一度苦笑した。御剣もそれにつられて思わず苦笑を口元に灯す。

序審は今から2日前…発砲事件の翌々日に予定通り開廷され、男の弁護士は事件内容ではなく心神耗弱を盾に減刑を求めた。

――…ちなみに心神耗弱の理由として、唯を撃った後、すぐさま2発目を撃てたにも関わらず、警官に取り押さえられるまで呆然と立ち尽くしていた事によるもの…というのが向こう側の主張だった。

しかし。御剣の完璧な立証によって、弁護人の言い分は却下され、結果…開廷して1日で結審したのだった。10年にも及ぶ数々の犯行とその卑劣な内容を前に、そんな戯言が通るはずなどない。弁護する以上はそれしか策がなかったとはいえ、男の弁護士に御剣は内心同情すらした。



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