銀魂‐Lonely rainy day‐U
□第39話 「今日」までの日々
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志保の中にもうひとつの「何か」が眠ってるって気付いたのはいつだっけかなァ。
あー、そうだ。
あんときだ。
ほら、だいぶ前に俺とお前がすっげーケンカしたことがあったろ?
攘夷戦争に参加するちょいと前だよ。
原因はとっくのとうに忘れちまったが、結構ヤバいケンカだったってことは覚えてるよ。
志保がしきりに泣いて止めようとしてたしな。
志保の涙にゃ弱ェおめーも、あんときは目もくれてなかったよな。
そんでとうとうお前キレちまって、刀抜いてきやがった。
俺もみすみす斬られるつもりはねーから、あのままだったら斬り合いになってたよなァ。
そんときだ。
ヅラの驚いたように「志保!?」って呼ぶ声が聞こえて、俺たちの間にちっちゃなアイツが割って入ってきていた。
あんときは心底驚いたよ。
ほんの少し青みがかかった黒いキレイな目が、真っ青に染まってやがったんだからよォ。
あんときの志保は、志保であって志保じゃなかった。
そんときを境に、攘夷戦争でも雨んときに限って「雨鬼」はたびたび顔を出した。
最初のときも、小雨が降っていやがった。
俺たちゃ今までずっと、志保の心の中に人を殺したいっていう気持ちが生まれると「雨鬼」になるんだって、疑わなかったよな。
状況的にも、それがピッタリ当てはまってたし。
でも今回、やっと分かったんだ。
違ったんだよ…まったく逆だ。
志保が誰かを強く護りたいと願うとき…「雨鬼」は出てくるんだ。
こんなときまで誰かを護りたいだなんて、まったく志保らしいよなァ。
決まって雨が降るのも、志保が血を洗い流すために雨を呼んでるのかもしれねェ。
でも、変わった部分もたくさんあるよな、志保は。
同じ「護りたい」でも俺たちとアイツへのもんじゃ違うのさ。
大人になったよ、志保は。
お前もそう思うだろ?
なぁ、高杉……。