黄の扉

□・浅井夫婦の日常
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「…長政様…お粥…。」
黒く綺麗に伸ばされた髪を持つ美しい女性。お市。
「すまない…市…。」
彼女の目の前で横になる男性。市の夫、長政。
彼はどうやら、熱を出して寝込んでいるようだ。
「…お熱…引いた?」
暖かいお粥を一旦置き、長政の額に手を当てる市。
「…少しは引いたみたいね…。」
「い、市…その…粥は…お前が作ったのか?」
妙な汗を額に滲ませ、長政は問う。勿論、市は「そうよ?」と言って首を傾げる。
「市…気持ちはとても嬉しいのだが…その…。」
長政がここまで狼狽える理由、それは市が作った料理に原因がある。
そう、市の作る料理はとてつも無く不味いのだ。
「…長政様…今日のは大丈夫…。」
市は優しく微笑んで、お粥が入った器の蓋を開けた。確かに見た目はいつもと違い美味しそうだ。
「…まつ様に教えてもらったの…お粥の作り方…。」
言いながら、市はお粥をレンゲですくい、長政の口元に運んだ。
「…食べて…?」
「……パクっ…。」
発せられた長政の感想は…。
「……美味い。」
「…良かった…。」
市は優しく微笑み、再び粥を口に運んだのだった。


「…市、お前の飯は美味いのだが…たまには休んでも良いのだぞ?」
長政に褒められて以来、市は料理について沢山学んだらしく、今では毎日市が食事を用意している。
「大丈夫…市、楽しいから…。」
市の微笑みに、長政も笑みを溢した。
「…まぁ…良いか…。」



end

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