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□香り
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受話器を片手にベッドの上で
たたずむこと一時間。

心が空っぽになったみたいに
機械的に涙が出てくる。


どうしてあんなこと
言ってしまったのだろう…


バカみたいなことで
ソウルと喧嘩してしまった。

あげくの果ては
[もう会いたくない]
とまで言ってしまい
一方的に電話を切ってしまった。




「…うっ、うぅっ…」




ポタポタとシーツに涙が落ちる



こんな俺に
愛想尽きたかもしれない



これで終わりかもしれない



考えるだけで怖くなる。




「ソウル…」




いま抱きしめてくれたら
どんなに楽だろう



いま俺の名前を読んでくれたら
どんなに安心するだろう




「キッド!」




いかん、幻聴まで…

「おいキッド!!」




誰かに名前を呼ばれて
反射的に振り向いた。


「…ソウル」



そこにいたのは
紛れもないソウルだった。

彼は息があがっていて、
首筋にまで汗が滴っていた。

おそらく走って来たのだろう。


「なんで…」


「なんでじゃねえよ、
誰かさんが電話ごしでキレやがるからこうして走ってきたんじゃねぇか」

そう言っいながら
ソウルは俺のいるベッドに
近づいてきた

「っ…!」


さっきまで泣いていたなんて
醜い姿見せたくない。


我に帰って必死に下を向いた。



「……」


ソウルは俺の目の前に立つと
しばらく黙っていた。



「…キッド、お前泣いてたろ」



「…」


図星な事を言われ何も言えなくなる。




「…ごめんな」


フワッといい香りがすると思えば、ソウルに優しく抱きしめられていた。


ソウルの香りに安心して、

ソウルの腕の中が心地よくて、



「ソウルぅ…

ごめん…ごめんっ…」


気付けば子供みたいに彼の胸にしがみついて泣いていた。




「バカだなぁ…
素直になれないのは
俺も一緒なのに。」


俺の頭を優しく撫でながら
彼は笑った。



感情的になって

時には傷つけてしまう。

でも寂しくなって
すぐ君の香りを探すんだ。


fin.

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