dream
□不器用なポニーテール物語
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私は今、ひたすらペンを動かしている。
放課後になってまでなんで課題なんかやらなくちゃいけないのか。私の隣には同じように課題の生徒が一人。
「おい。」
彼は今、とても不機嫌。
眉間にシワをよせ、大げさに音をたてて椅子にもたれる彼は、いかにも[いらいらしてます]と主張しているようだ。
感情を抑えるってことができないのかしら。
「なぁに?」
私はソウルを横目で見ながら答える。
彼は右手で口元を押さえ、足を組んでおり、その顔は本当に虫の居所が悪いようだ。
なにをそんなに怒ってるのか。
問いかけようとするが、急いで自分の口つぐんだ。
変に口を出して機嫌を悪くされても困るもの。
「……」
「……」
二人とも無口のまま、刻一刻と時間が過ぎていく。
ソウルから声をかけたのに、何をそんなに意地を張っているのか。
「…なんでだよ。」
不意にソウルが呟いた。
「…なにが?」
なんのことだかさっぱりわからない。
私なにかしちゃったかな…
しびれを切らしてか、ソウルは勢いよく立ち上がった。
「なんでおろしてんだよ!!!髪!!!」
…………は?
ビシッと私の頭を指差すソウルを呆然と眺めてしまった。
いやいやいや、
確かに私はいつもポニーテールだけども…。
彼は、涙目で今にも泣きそうな顔で私を見つめている。
「おろしてるほうが可愛いってキッドに言われたから…」
えへへ、と自分の髪を撫でる。
その一言にソウルは
「なっ……!」
みるみるうちに顔色が変わる。
[ガーン]という効果音が後ろで鳴ってもおかしくないほどでのリアクションっぷりである。
「キ……キッドだぁ?」
よろよろと私に近寄ってくるソウルは、はたから見れば亡霊のようだ。
こ……こわい。
危険を感じてか無意識に後ずさってしまい、すぐ後ろの壁に追いやられる。
「俺はな…ポニーテールがいいんだよ!」
ダンッと私の顔の左右の壁に両手をつくソウル。
その顔は深刻そのもの。
彼の中のポニーテールの重要性は人並みではないらしい。
「ち…ちょっとソウル」
迫りくるソウルの顔を手のひらで覆う。
「そんなにポニーテールが好きなの?」
手のひらをどけてソウルの目を覗き込む。
すると、彼は目を丸くして口をぱくぱくさせていた。
「す…好き…!?」
やっと出たのは
は掠れ気味で突拍子な声。
それと同時にみるみると彼の顔が赤くなる。
「え…なに?」
そんなに意味深な言葉じゃなかったはず。
というか、そんなに赤くなられては自然とこっちまで赤くなってしまう。
「……」
「……」
二人とも赤くなり、あげくの果ては先程のような無言状態。
カチカチカチ…
時計の針の音さえ耳障りになる。
カチカチカ…ドゴーン!!!
「ひゃっはああああ☆やってるか補習ー!!!俺様が見に来てやったぜえええ!!!」
勢いよくドアが吹っ飛ばされ教室に入って来たのは、他でもないブラック☆スターだった。
これでドア壊すの12回目だよ…。
まぁ、何はともあれ
「ブラック☆スター!!」
場の雰囲気を変えてくれて助かった…。
あんな静寂が続いていたら、おかしくなっちゃうよ。
「よう、小春!今日は髪おろしてるんだったな!」
私の横にある机にヒョイッと飛び乗るブラック☆スター。
「似合ってんぞ♪」
にこにこしながら私の髪に触れる彼。
「ありがとっ」
そのときソウルの顔が一瞬曇った気がした。
気のせいかな…?
しかし、ブラック☆スターもそれ
を見逃してはいなかった。