dream

□ずるい
1ページ/1ページ




金色の目をした死神。

秀才な頭脳。

漆黒で綺麗な髪。

人形のように整った顔立ち。



「…どうりで女子が騒ぐはずだよね」

小春は、ため息混じりに呟く。

それを横目に

「たわけ」

と一言。

「俺が他の女子なんて気にするはずがないだろ」

と、キッドは読んでいる本から目を離さず淡々と続けた。


その横顔はあまり事を大きくとらえていない様子。


「じゃあさ、じゃあさ、」

小春はキッドの顔を覗き込む。

「私がキッドみたいに沢山の人からモテちゃったり、告白されちゃったらどうするの?」


唐突な質問にキッドは小春の顔を見つめ返す。


「…」

そして彼は顎に手をあて、少し考えるそぶりを見せたあと


「気にしないな。」


と普段と変わらぬ表情で答えた。


「……」



「……ばか」


小春はしばらくして呟いた。

返ってきた答えがあまりに素っ気なかったため危うく涙が出そうになる。


普通恋人同士なら甘い言葉を交わすものではないのか。

それとも、自分のことを大事に思っていないのか。


うつむいて色々な考えを巡らしてしまう。


「……小春」

すると、突然キッドが小春の頬に触れた。

「お前は俺の女だからだ。」


まっすぐな目で小春を見つめるキッド。

その瞳はなんとも自信に溢れていた。


しかし小春はなんのことか分からず「え?」と聞き返してしまう。


それを見てキッドは呆れたようにため息をつく。


すると彼は不意に小春との距離を縮めてきた。


「あ…」


唇が触れるか触れないかの数センチ。


息づかい、心音までが聞こえてきそうな距離に小春の鼓動が速くなる。




「俺はお前を信じている。だから何も心配する必要はないだろ?」


問いかけるように首かしげるキッドにつられ、小春は何度も頷く。


「当たり前じゃんっ」


彼は満足げに微笑むと赤らむ小春に優しくキスをした。


「どこにも行かないから安心しろ。」



そう耳元で囁かれて小春が真っ赤になったのは言うまでもない。




(やっぱり死神、

ずるい人だな。)


fin.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ