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□黒兎様 Happy Birthday!
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『あー…最悪、』


有り得ないでしょ、何の呪いよコレ。

一年に一度、無条件でクラスの主役になれる日……いわゆるバースデー。

ほんの1分前まで、あたしは確かに主役だった。

貰った誕プレ達で机の上を埋めて、友達に「おめでとう!」と囲まれてた。

なのに……!



ガラッ、
『すいませーん、お腹痛いんですけどー……』


やっとの事で辿り着いた保健室のドアを開けながら言えば、

「あ…?」

心底面倒臭そうな一文字返答が聞こえて来た。


『おはようございます…高杉先生。』


「……何だよ、おめーか。」


あたしで悪かったな、と脳内で悪態をつきながら、突如腹痛に襲われた事を告げる。


「横になりゃ治んだろ。そこで寝てろ。」

『………はーい。』



また随分と適当だな、オイ。
何でこんな人が保険医としてやっていけてるのか、不思議でしょうがない。


赤黒い後ろ髪を眺めつつ、俯せ独特の軽い息苦しさを感じる。

ああそう言えば、うちのちゃらんぽらんな担任、銀八の知り合いだとか言ってたな…



「………あぁ、」

『へ?』


ふと、高杉先生が何かに気がついたようにピクリと動き、
あたしは思わず問い掛けた。


『どーかしたんですか?』

「今日、か。」

『……何がですか?』


俯せのまま尋ねるあたしに、高杉先生はコツコツ近付いて。



『え、』

「ククッ、マジで効いたみてぇだなぁ。」


緩く口角を上げながら、あたしを見下ろして、
かと思ったら、側にあった椅子にドカッと座る。



『効くって……呪いでもかけたんですか?』

「あァ、かけたぜ。」

『はい!?』

「ほらよ。」



相変わらずの笑みで、白衣のポケットから何かを取り出しあたしに差し出す。

腹痛のことをすっかり忘れて起き上がり、躊躇いもなく受け取った。



『…………あ、』

「誕生石だってよ。」


開けてビックリ、中にはアクアマリンのネックレス。

いや、アクアマリンが3月の誕生石だってのは有名な話ですが……

この人の言い方的に、知らないで店に行って店員に言われて買った……ぽい。



「教室じゃあ渡せねぇだろ?」

『だから呪ったんですか。』

「体調崩しゃ、俺に会いに来るからなァ。」



アホかこの先生。
アホ険医め。

でも、



『先生ありがと、…………好き。』

「はんっ、当然だろ。」



得意そうな視線を向ける片っぽの瞳に、
ふっと笑みがこぼれた。






1カラットの恋呪い

(つか先生、本当は黒魔術担当?)
(ククッ、さぁなァ…?)



fin.
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