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□064.どんぐりの背比べ
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「センパイ?まだっスかぁ?」

黄瀬が下から不満そうな声をもらす。


「んー。」

生半可な返事を返すだけで、離してやるつもりなんかない。


黄瀬の家で、黄瀬のフカフカのソファーで、黄瀬の膝の上に乗っかって
黄瀬のサラッサラで癖一つしかない金色の髪をかきあげてやり、
額に瞼の上に、ほっぺたにキスを送り続ける。

モデルやってるこいつの商売道具の顔は、持ち前の美しさだけでなく、女である私が顔負けするくらい、毎日毎日化粧水やらパックしててケアしている。


女子からは、モテモテで、いつもキャーキャー騒がれてて、弁当やらプレゼントやらの差し入れは日常茶飯事だ。

バスケ部のエースであるこいつはバスケしてるときは本当にかっこよくて(こいつの目の前じゃ言ってやらないが)、全身がゾクゾクするほど見入ってしまう。すごくアレなたとえだけど、バスケしてるときの黄瀬の表情は、犬っころみたいな人懐っこい面でもなく、生意気な面でもなく、女子にヘラヘラしてる面でもなく、あの・・・最中みたいな雄丸出しの顔してる。


今日だって、ファンの一人って感じじゃなくて、割と真剣な感じで黄瀬に告白してる女子を見てしまった。そりゃ、あれだけかっこよければ、本気で好きになってしまうのもわかる。現に自分だってそうなわけだし。


黄瀬とは付き合っているんだけど、自分一人が独り占めしていい存在なんかじゃないってことはわかってる。でも、ときどき不安になる。今日、告白してた女子だって、すごく可愛い顔してたし、胸だってでかかったし・・・。自分は黄瀬に釣り合ってるのかなって。


だから、いま、このふたりっきりの時間だけは、ゆるしてほしい。
黄瀬を独り占めすることを。黄瀬が自分の彼氏だって確かめることを。
私は黄瀬のことが好きだ。
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