krbs

□028 予定は未定
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捏造笠松familyおります。
ご注意を。





きてしまった。
返事もないのに、来てしまったのだ。

でもこんなときくらい、直接会って話したい。

何勝手に来てんだって、シバかれるかもしれない。

それでも、会いたかった。
一応、森山センパイから預かってきた宿題やら、配布物やらを届けるという口実もある。


住所くらいちゃんと聞けばよかったと今更ながらに後悔する。
日没前、住宅地のど真ん中で黄瀬は困っていた。

「おい、どうしたんだよ?」

黄瀬が振り返ると小学生高学年くらいの
少年がいて、黄瀬に向かって指をさす。

「えっ?」

あれ、この子・・・
初対面なはずなのに、どこかで見たことのある顔・・・

(センパイにそっくりじゃね!?てか、かわいいっ。)

少年は黄瀬をきょとんと見上げた。
その仕草に黄瀬はキュンとなる。

しかし、ここは、いつ誰が通るともわからない住宅街だ。


買い物帰りの主婦にでも見つかって、時間をとられ本懐を遂げられずに帰ることだけは避けたいので、

「ねえ、君さ、この辺で笠松さんっていう家知らないッスか?」

と聞くと、

「キセリョだ・・・・・・。」

少年は黄瀬の顔を凝視する。

「何でそんなこと聞くんだ・・・?
これ、ドッキリがなんかだろ??
その手には乗らないからな!!」

「いや・・・ちょっとオレ、
笠松さんの家に大事な用があるんだw
だから、もし君が知ってたら、教えてほしいんスけど」

「教えられるかー!!」

プイっとそっぽを向くと、急に走り出した。

「あっ、ちょっとボク!!待つッス!!」

反射的に黄瀬はその少年を追いかけてしまった。

「ついてくんなー!!」

男の子の足は意外と速く、数十メートル先の民家に駆け込んだ。

「んもー。そんなに叫ぶことないじゃないスか
・・・、ってええ〜!!」

男の子が駆け込んだ先の表札を見れば
そこには「笠松」と書かれている。

「まさか・・・ここがセンパイの家・・・?
ってことはさっきの子ってまさか・・


「あの〜、家に何か御用ですか?」


薬局のレジ袋を提げた女性が、黄瀬に声をかけてきた。

顔のつくりはあまり笠松とは似てないが、
青灰の大きな瞳を見て、直感した。

(これがセンパイのお母さんッスね。
ってか、未来のオレのお母さん・・・。)


しかし、黄瀬の顔をじーっと見るなり、

「黄瀬涼太・・・さん・・・??」

と驚く。。


「あ、初めまして。
黄瀬涼太といいます。
その・・・幸緒さんが熱出して、早退したって聞いたんで、お見舞いを兼ねて、課題とかプリントとか持ってきたッス・・・突然、すみませんッ!!」


黄瀬がバッと頭を下げると
笠松の母は慌てふためく。

「ええっ!!こちらこそ、わざわざすみません
・・・。ところで、幸緒とはどういうご関係で・・・?」

(えー!!幸緒さん、まさかオレのことお母さんに話してないんスか!?
じゃあ、なんて説明したらいいんだろ・・・。
クラスメイトでもないし、女バスでもないのに
・・・余計、怪しまれるッスよー)

うまく答えられないでいると
玄関の戸がかちゃりと空いて
さっきの少年が顔を出した。

「お前・・・本物のキセリョ?
母さん、まともに取り合うなよ!!
どうせドッキリかなんかで、隠しカメラかなんかがあるんだ!!」

「幸也!!やめなさい。失礼でしょ!!」

笠松の弟と思われる少年を叱責するものの
なんとも疑わしそうな表情は拭えない。

なんて間が悪い・・・。
少年には完全に完全に疑われてる。

あきらめてプリントだけ渡して帰ろうと思った。

すると

「あら・・・?」

笠松の母は、視線をそらし
黄瀬の胸ポケットをじっと見つめた。
胸ポケットからはスマホにつけた
アクセサリーが垂れている。

これは、笠松が黄瀬の誕生日にくれた
もので、黄瀬の誕生石である真珠を
あしらったものだ。


「黄瀬さん、本当にお見舞いにきてくださったんだわ。ドッキリなんかじゃないわよ。
こちらこそ、いつも娘がお世話になっています。狭い家ですけど上がっていって。」

笠松母はふわりと微笑むと、
黄瀬を玄関に通した。

「キセリョが家になんの用だよ〜!!」

笠松弟は納得が言ってないみたいだった。

「幸也、あなたはリビングに行ってなさい。
二階には行かないようにね。」

有無を言わせない母の言い方に弟はしゅんとうなだれた。


笠松の母に促されるまま、二階に連れて行かれる。

「幸緒〜、黄瀬くんがお見舞いに来てくれたわよ。」

「え!?黄瀬!?」

部屋の中で自分が来たことに驚いているようだ。

「じゃ、黄瀬くん。あとはよろしくね。」

にこっとほほ笑むと、笠松の母は行ってしまった。
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