ハートのクイーンのお遊び
□闇人形
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〜プロローグ〜
―――此処ハドコダロウ?
人形は闇の中で思った、暗い暗い闇の中、右も左も上も下もわからない、何故己はここに居るのだろうかと、人形は疑問に思った
そこでふと人形は気がつく、何故、唯の人形でしかない己がそのようなことを思ったのだろうか?
意思のないはずの、唯の物であるはずの人形である己が何故、そのようなことを考えられたのだろうか・・・?
―――ワカラナイ
何故突然自分に意思が現れたのかも、何故ここに居るのかも・・・だがたった一つだけ、人形にもわかることもあった
それは自分は捨てられたのだという事実、自分は用済みだという事実だ
―――ソウダ、ワタシハ、捨ラレタ・・・デモ・・・
誰に、捨てられたのだっけ?
ソレを思い出そうとしても、人形には全く思い出せなかった・・・捨てられてしまった以前の記憶が人形にはなかった
―――デモ、ソレハモウワタシニハ、関係ナイコト・・・カ
人形は、ソっと目を閉じた
このまま、どうせ消えてなくなってしまうのだろう・・・なら、抵抗しても無駄だろうから
捨てられた人形は、消えてなくなるのが運命―――ならばいっそ、諦めてしまえばいいのだ・・・でも
―――寂シイ、ナ・・・悲シイ、ナ
捨てないで、一人にしないで、偽物の人形の目から流れるはずのない涙が流れ落ちた
―――何デ、何デコンナ目ニ合ワナクテハイケナイノ?
寂しいよ、悲しいよ、誰か・・・誰でもいいから
―――私ヲ、此処カラ助ケテ・・・ッ
そう人形が強く願ったその時だ、闇の中から誰かが現れた
白い服を着た男、人間の形をしていたが・・・人形には目の前にいる男が人間には見えなかった
・・・一体、目の前の男は何者なのだろうか
「お前か?俺を呼んだのは」
長い沈黙の中、最初に口を開いたのは男の方からだった
―――知ラナイ
「おかしいな、確かに俺を呼んだ声が聞こえたはずだが」
人形は少し考えた後、口を開いた
―――・・・助ケヲ、呼ンダ
「助け?」
―――寂シイカラ、悲シイカラ、誰カニ助ケヲ求メタ
「そうか・・・」
男は愉しそうに口角を上げる、そんな男に人形は小さく首を傾げた
「なぁ、お前俺と一緒に来ないか?」
突然の男の言葉に、人形は驚く
いきなり、この男は何を言っているのだろうか?
捨てられて、これから消えるしかない存在である己に、何故このようなことを言うのだろうか・・・人形はわからなかった
「いきなりで驚いてるみたいだな」
―――当タリ前ダ、ワタシハ消エル存在ナノニ
「消える?何でだ」
―――・・・捨テラレタ人形ハ、消エルノガ運命ダカラ
男は興味深そうに人形の言葉に耳を傾けていた、人形はますます不思議に思う
「捨てられたら、お前は消えるのか?」
―――ソウ言ッタ
「ならよ、新しい持ち主が現れればお前は消えないんだよな」
―――オ前、何ヲ考エテルンダ?
人形の問いに、男は笑いながら答えた
「ならよ、俺が新しい持ち主になってやるよ」
それならお前は消えないし寂しくもねぇ、良い事ずくめだと、男は笑いながら言う、その言葉に人形はますます驚いた
何故、どうして、と人形の中に疑問が渦巻く、そんな人形などお構いなしに、男は笑った
「俺の名はゼット、闇の皇帝・・・そして、お前の新しい持ち主だ」
―――ゼット、闇ノ、皇帝・・・
「そうだ、お前の名前は何だ?」
―――ワタシノ名ハ、アリス・・・
「そうか、アリス・・・いい名前だな」
男・・・ゼットの大きな手が、人形、もといアリスの頭に乗る