I feel…

□鍵
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ありきたりな日々、
昨日と同じ事を繰り返すだけの日々に
少々飽きを感じたのかもしれない。

事の発端はそんな些細なことから始まるんだ。



高校3年の3学期。
初めてのHR、たった50分の間で私の人生は変わったんだ。
過言かもしれないけれど。



「3学期最初のHRは今学期の役員等を決める。まずは…学級委員からだな。誰か立候補者。手を上げろ。」


3年3組の担任が前で言ってる。
学級委員か…。

みんな大学受験で忙しいし
中には忙しくない人も居るけど
大抵そういう人は表に出るのが苦手だったりするんだよね。


まぁそれが私何だけど。
大学受験、何もすることが無いってわけではない。
けど、もう近くの文学系に転ぶことを確信してるからもう今更必死になったりしない。
別にレベルの高い大学じゃない。
私の成績で余裕で入れる。

まぁそこまで私の頭はいい訳じゃないんだけど。
言うならば…中の中…ってところか。


ボーッと窓の方を見ながら頬杖をつく。
そして視界に入る彼をチラッと見て
また視線を窓の方へと向けた。


一番後ろの廊下側から2番目の席。
恐らくこの席は誰もが羨むベストポジションな席だろう。
後ろだから多少授業中寝てもバレ無いし
手紙を書いて居ても漫画を読んでいてもある程度バレ無い。

おかげに廊下側だからだろうか。
夏には涼しい風が入ってくるんだ。

まぁ生憎今は冬だから冷たい風が入ってこないようにドアを閉めているけれど…。
そんなベストポジションに居るけど
私は全然嬉しくも何とも無い。
寧ろ彼から一番遠い席で…。



「おーい、誰か立候補者居ないと次に進めないぞー。」


先生がそういうも誰も手を上げない。
面倒なことには付き合ってられない、ってとこかな。
学級委員って聞きはいいけど仕事は殆ど雑用に近いしみんな自分のことで精一杯みたい。


願わくばこの文学系大学に転ぶと決まっている私が行けばみんなのためになるんだろうけど。

勇気、というものはどこに落ちているんだろう…。


カチカチとシャーペンを押しながら
黒板を眺めていると前の席の里美が私の方に振り返った。



「…な、何?」


ちょっと苦笑しながら言う。
さては…。


「美雪、学級委員やりなよ。」

「そんなことだろうかと思った。」


呆れながら里美を見る。


「無理だよ、私。表に出る仕事向いてないもん。」

「でもあんた毎日放課後の時間持て余してるじゃない。」

「そうだけどさぁ…。」


小さくはぁーっとため息をついて
口を尖らせた。
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