□信頼し結束する力!
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ついにやって来たフットボールフロンティアアジア地区予選決勝戦。今までサッカー未経験者だったメンバーはこの日のためにブラックルームでかなりの特訓を積んで来たのだが、松風天馬はみんなの意気込みは嬉しいもののこの光景に釈然としない。

相手は今大会ダントツで得点を取って来た、ウズベキスタン代表ストームウルフ。開始早々、エースストライカー・マクシム=アドロフの必殺シュートによって先制点を奪われてしまった。


「嘘…だろ……」

「っ……!」


試合前の誓いを早々に破ってしまった井吹宗正はショックを受け両手と両膝を地に付けてうなだれ、神童拓人も相手に翻弄されてしまったことに歯を食いしばる。


「クソッ!」

「まさか、突破されるなんて……」

「それにあの速さです。攻撃態勢に入ってからシュートを撃つまでに要した時間はわずか3.2秒。速いのはわかっていましたが、まさかここまでとは……!」

(これが、ストームウルフの力!)


ミーティングで事前にデータを取っていたとはいえ、予想以上の速さに九坂隆二は悔しく思い、皆帆和人と真名部陣一郎は困惑する。天馬は相手が決勝戦まで勝ち進んで来たのも納得が付いた。


「クウッ……だからって負けられるかよ! 俺たちだって、ブラックルームで鍛えたんだ!」

「任せて、井吹! 私たちがすぐに取り返すから――」


ガンッ!!


「「!」」


このままやられるわけにはいかないと鉄角真は意気込み、野咲さくらは井吹に顔を向けるが、井吹は背を向けて左拳をゴールポストに叩きつけていた。


「そんなはずはない……この俺が止められないなんて……! クウッ…今度こそ止めてやる!」

「…………」


そんな井吹の背を見つめていた神童はしゃがんで靴紐を調整する。そして神童が井吹を見ていたように、神童もまた相手に見られていた。


「やっぱ、あいつさえ抑えればキーパーはザル。この試合、楽勝だね」

「油断は禁物だ。気を抜くな」

「フッ、わかってるって」


ストームウルフの司令塔・ルスラン=カシモフはイナズマジャパンの弱点を見抜いていた。なので神童さえ抑えつければ勝てると言ったが、キャプテン・ドミトリー=ソビロフはイナズマジャパンの潜在能力を警戒しているのか注意した。


「まだまだ1点! 挽回していくぞ!」

「「「「「オウッ!」」」」」

「フッ。せいぜいがんばるんだねぇ」


天馬のかけ声に応えるように全員が意気込む。対してストームウルフはルスランのようにイナズマジャパンを甘く見ている傾向が多かった。

イナズマジャパンのキックオフで試合再開。剣城京介が瞬木隼人にボールを渡したあと、神童は再びゴール前に移動した。


(これ以上、点をやるわけにはいかない!)

「瞬木!」

「ふっ!」

「さくら!」


天馬の合図で瞬木は天馬にパスを出し、天馬は次に回すとさくらはジャンプして足を延ばすとボールを取った。


「ムダなことを。ロラン!」

「っ!」


ドリブルするさくらに向かって、ルスランが合図を出すとロラン=ラザレルがさくらを止めに掛かる。


「さくら!」

「ふっ!」


天馬がボールを回すよう声を上げるが、さくらはそのままロランのスライディングをジャンプしてかわした。


《野咲、抜いたー!》

「!」

「よし!」

「へぇ」

「よし、いいよさくらさん! その調子!」


指示とは違っても抜けたことに天馬はホッとし、鉄角はガッツポーズをすると、ルスランはそこそこやるのかと感心するように呟いた。空野葵もいいプレーをするさくらを応援する。


(そう簡単に取られるもんか……あれほどの特訓をしてきたんだから! そう……レジスタンスジャパンに負けたことで、私たちは強くなった。――今ならどんな相手にも、負けやしない!)

《野咲が上がって行く!》

「「行かせない/うらああっ!」」

「あっ!」

「「ローリングカッター!」」

「きゃあ!」


ドリブルするさくらにミーチャ=エレミンがジャンプをして逆さまになるとセルゲイ=チェルノフがその手をつかみ、二人で縦回転して切れ味の鋭いカッターのようにさくらを止めた。
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