□幸せだけど困りもの
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FFI終了後の初めてのゴールデンウイーク。瑞貴はアメリカにいた。


「じゃ、帰るときは連絡してね」

「うん。ありがとう」


瑞貴はシンに待ち合わせ場所の公園まで送ってくれた礼を言うと、シンは微笑んでその場を去った。


「さーてどこにいるのかな?」

「――ミズキ! こっちだ!」


呼ばれたので振り向くと、そこには瑞貴が探していたお目当ての人物がいた。


「マーク!」


――FFI終了後、瑞貴はマークとつき合うことになった。帰国したあとはお互い電話とメールしか話すことができなかったが、もともと瑞貴は長期休みにアメリカに行こうとしていたのでマークはそれを快く了承したのだ。

瑞貴は昨日の夜にアメリカに着き、シンの計らいで滞在中は神崎グループのホテルに泊まることになった。そして翌日、マークにアメリカを案内してもらうことになった。


「マーク、久しぶりだね!」

「ああ。いつもは電話やメールばかりだったからな。それと俺だけじゃないぞ」

「えっ?」

「ミーもミズキに会えてギンギンに嬉しいよ!」

「瑞貴は相変わらず可愛いね。いや、さらに可愛くなってるよ!」

「再会早々に何言ってんだ! 瑞貴ちゃん、久しぶり」


FFIでアメリカ代表として出場したマークとディランと一之瀬と土門だ。


「てっきりマークだけだと思ってたよ。教えてくれたらよかったのに」

「すまなかったな。ディランたちもミズキに会いたがっていたし、せっかくだからと思って秘密にしてたんだ」

「サプライズってやつだね。びっくりしたけどみんなに会えて嬉しい!」

「それはよかった」

(((よく言うぜ……)))


会話に花を咲かす瑞貴とマークだが、ディランと一之瀬と土門は二人が見えない位置でマークに呆れた視線を送っていた。



☆☆☆☆☆


事の始まりは三日前。いつものようにマークは瑞貴とメールを終え、すぐにディランと一之瀬と土門に集合の連絡を入れた。

その次の日、待ち合わせしていたカフェでディランと一之瀬と土門は自分たちを呼び出した理由をマークに問うと……。


『頼む! 今度ミズキが来てアメリカを案内することになったんだが、一緒に来てくれ! 今の俺は二人きりとか恥ずかしくてムリなんだ!』

『断る!』

『えぇっ!?』

『一之瀬!?』

『カズヤ、断るのギンギンに早いよ!?』


なんと一之瀬は即座に断った。当然マークはもちろん、土門もディランも驚いた。


『忘れてもらっちゃ困るよマーク! 俺が先に瑞貴を好きになったのにさらっちゃってさ! まだ俺はあきらめてないんだからね!』


日本にいたときは一緒のチームで同居もしていた一之瀬だ。プライベートでは瑞貴に一番近い存在のはずなのに、瑞貴と最初から一緒にいた円堂を始め雷門メンバーはまだしも(いや、よくないが)、FFIで出会ったマークに取られたのが解(ゲ)せないようだ。


『一之瀬、まだ言ってんのかよ。瑞貴ちゃんが選んだんだからあきらめろよ』

『ムリ!』

『そっか……』


頑なに拒否する一之瀬にマークは肩を落とした。その様子にさすがに不備に思い、土門とディランは顔を見合わせて助け舟を出す。


『じゃあ一之瀬は瑞貴ちゃんに会わなくていいんだな。俺は行くから』

『えっ?』

『ミーもミズキに会いたいしね。マーク、ミーとドモンは行くよ』

『えっ? えっ?』

『ありがとう二人共!』

『ちょ、ちょっと待った!』


土門とディランにマークは感謝すると、一之瀬は慌てて声を上げた。


『俺も行く! 行くから!』

『ありがとう、カズヤ!』


一之瀬も行くことが決定し、土門とディランは『作戦成功』というかのように顔を見合わせて笑った。
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