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□待ち人がいるから、僕もいる
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キョウリュウジャーのキョウリュウグリーン・立風館ソウジは学校の休みの日には稽古やデーボス軍との戦いに明け暮れる日もあれば、一人の男子高校生として休みを満喫することもある。ちなみに今日はその日である。
待ち合わせの公園の噴水の前で、腕時計を見れば時間までまだ十分はある。しかし彼が来たのはそれよりも二十分も前だ。顔には出さないものの今日という日をそれほど楽しみにしている。
タッタッタッタッ――。
「ソウジくん! お待たせ!」
駆け足でやって来たのはソウジと同級生で恋人でもあるミズキ。彼女はデーボス軍との戦いに巻き込まれたとき、ソウジがキョウリュウグリーンと知ったが、変わらず彼と友人と過ごしてそれから恋人同士となったのだ。
「ご、ごめんね。私、遅れちゃって……」
「俺が早く来ただけだから気にしなくていい。それより、駆け足で来たら危ないだろ」
「これぐらいの高さなら大丈夫だよ」
ミズキが履いているのはいつものローファーと違い、踵が少し上がっているパンプスだ。
「それよりもソウジくんと少しでも早く一緒にいたかったし、ソウジくんがもういたからびっくりしちゃって」
「……俺は男として彼女を待たせたままにするわけにいかないと思ったからだ。気にしなくていい」
ポンッとソウジはミズキの頭に手を置いた。少し間があったのは、ミズキが嬉しいことを言ってくれたのでその照れ隠しだということをミズキは気づいていない。
――デートの場所は水族館。ミズキが雑誌に載っていたペンギンの散歩を見てみたいと言う理由でここにしたのだ。
「ペンギンの散歩は午後からみたいだな。昼食は早めにするか?」
「…………」
「ミズキ?」
「あっ、そうだね!」
予定表を確認していたソウジがミズキに顔を向けると、何故か彼女は周りを見ていた。それも何かに警戒するように。
本人は意図していないのだが、ミズキはどちらかというと正直なので心境が顔に特に出やすい。先ほどまでハシャぎながら水槽を見ていたのと打って変わって静かになったので、ソウジは不思議に思った。
――お昼の予定を立ててもまだ時間はあるので、ゆっくりと水槽を回るミズキとソウジ。するとミズキはクリオネの水槽に足を止めた。
「あっ、クリオネ! 可愛いね〜」
「そういえばクリオネは流氷の天使と呼ばれるらしいな。または妖精とか」
「天使に妖精か……まるで私みたい?」
「そうだな」
「えっ!」
冗談で言ったのだが肯定されたのでミズキは驚いて目を見開いた。しかし次いでソウジはニヤリと笑う。
「実際、食べている姿は悪魔にも見えるようだぞ。よく誰かさんは食事のことになると目の色を変えるからな」
「それって私が食い意地張ってるってこと!?」
ガーンという効果音が聞こえるくらいショックを受けたミズキのリアクションに、ソウジは面白そうに笑っていた。
「あっちにはハリセンボンがいるみたいだな」
「…………」
案内板を見ながらソウジがそう言うも、ミズキはうしろを……というか、また周りを気にしていた。
「ミズキ、置いてくぞ?」
「ご、ごめん! 置いてかないで!」