□砂の星にやってきた!
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「人間とは限らないよ」

「宇宙船に潜む得体のしれない生物……」

「怖いこと言わないでよ……」


皆帆と真名部の言葉にさくらが冷や汗を流すと、井吹宗正は不安要素は確保するべきではないかと告げる。


「捕まえたほうがいいんじゃないか?」

「確かに。ワープしている間、そいつが何かしないとも限らないからね」

「他の星が妨害工作を仕掛けて来ている可能性がありますよ」

「そんな……」

「自分たちの星の運命がかかってるからね。それくらい想定しておくべきだよ」


皆帆と真名部と推測はごもっともだが、ただでさえ未知の宇宙にいる不安があるのに妨害工作と訊いて、葵たちはさらに不安が募る。

そんな彼らを見て瑞貴は軽く手を上げ、この場にいる全員に向かって告げる。こういうとき大人の自分が出たほうがいいと思った。


「私が見て来る。みんなはここで待ってて」

「いや、大人といえど女の瑞貴さんを一人で行かせられません!」

「そうですよ!」

「俺たちも行きます!」


鉄角と天馬と瞬木隼人が次々と声を上げると、他のみんなも力強く頷いていた。教え子たちの気持ちは嬉しいが、危険にさらわすわけにはいかないと瑞貴は言う。


「ありがとう。だけど、これから試合を控えているみんなに何かあったらいけないよ。だから私一人で充分」

「そう言うと思いました。でも、瑞貴さんに何かあったら地球にいる円堂さんが悲しみますよ」

「「「「「えっ」」」」」

「ん?」


すると雷門出身以外のメンバーは一斉に声を上げて座名九郎を見た。逆に注目された座名九郎は何か変なことを言ったかとキョトンとする。

いち早く復活したさくらは興味津々で座名九郎に詰め寄った。九坂と好葉のときもそうだったが、スポーツから一歩離れれば女子力全開になる。


「何々!? あの円堂さんっていう人と瑞貴さんってそういう仲なの!?」

「ご存知なかったのですか? お二方は夫婦なんですよ」

「マジかよ!?」


てっきり全員知っていると思って座名九郎は言ったので、さくらや井吹の反応は予想外のものだった。


「瑞貴さん、詳しく教えて……――いない!?」

「一人で行ったのか!?」

「いや、瞬木の姿も見当たらない」


勢いよく振り向いたさくらは侵入者のことを忘れて今度は瑞貴に問い詰めようと振り向いたが、さっきまでいたはずの瑞貴の姿はなかった。それどころか剣城京介と神童拓人は周りを見渡すと、瞬木もさっきまでいた場所ににいなかった。



――座名九郎にみんなが注目している間に抜け出した瑞貴は、慎重に廊下を進んでいた。しかしそのうしろには瞬木もいる。


「瞬木くんもみんなと一緒にいてよかったんだよ? あの場には黒岩監督もいたし」

「いいえ、コーチだけに行かせるわけにはいきませんから」

「……その言葉、本音かな?」

「えっ」

「瞬木くん、昔の私と同じ目をしているから。――人を信じていないって」

「……だったらなんですか? 『仲間を信じて』とでも言うつもりですか?」


聡い瑞貴なら気づいていもおかしくないと思ったのか、瞬木は皆帆のときのように小さくも低い声音で尋ねる。


「言ってするようなら、瞬木くんはとっくにそうしているでしょ? ――でも、忘れないで。自分が知らない内に、周りには自分の手を重ねてほしいと伸ばしている手があることを」

「…………」

「いた!」

「えっ!?」


瑞貴の言葉に瞬木が目を見開く中、通路の奥に何かが動く影が見えた。さっそく追いかけようと瑞貴は動こうとすると……。


「瑞貴さん! 瞬木!」

「天馬!? みんなも!?」


うしろから駆け付けたのは、天馬を始めとする他のアースイレブンと葵たちだ。


「待ってなきゃダメじゃない! さっき何かが動く影を見えたの!」

「だったら尚更、瑞貴さんと瞬木だけにしておくわけにはいきません。凶暴な相手かもしれませんから、慎重に行動すべきです」

「それに全員で動くほうが見つけやすいと僕は思います」

「……わかった。ただし、部屋や通路の扉は私に開けさせること、みんな私の目の届く範囲にいること。いいね?」

「「「「「はい!」」」」」


真名部や皆帆たちの熱意に負けて瑞貴は溜息を吐いて指を立てながら注意すると、全員了承するように声を上げた。

それから近場の部屋を開けたり、寝台車両の中心にあるテーブル席の下を覗いたり、ミーティングルームをくまなく探してみるが何もいない。しかし途中の廊下でカラッポになったポテトチップスの袋を真名部は見つけて拾い上げる。


「これは……食い荒らされています」

「やっぱり何かいるんだ……」

「宇宙ネズミとか?」

「「えっ!」」

「フム、無重力に適応して巨大化したネズミが存在する可能性は否定できません」

「「えっ……――ムリムリムリ! それはムリー!」」


皆帆と真名部の言葉で想像したのか、さくらと葵は顔を見合わせると涙目になった。
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