□行くぞ! 宇宙へ!!
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「まだ『一人』ということにこだわっていないか?」

「そういうんじゃない! 俺は、俺の実力不足のせいでみんなに迷惑をかけたくないんだ!」

「……かつて、俺たちにこんなことを言ってくれた人がいた。『サッカーは十一人によるハーモニー』だと」

「十一人によるハーモニー……」

「全員が一丸となって初めて、勝利という目標が見えて来るんだ」

「…………」

「もし1点取られたならば、俺たちが必ず取り返す! それがチームだ。忘れるな」

「神童……」


そう言って神童はブラックルームから出て行った。プレッシャーのあまり守りのことばかり考えていた井吹は、攻めることにも頼もしい仲間がいるということを忘れかけていたのかもしれない。



☆☆☆☆☆


木枯らし荘の天馬の部屋で、天馬は信助と秋に本当のことを話した。自分たちは日本代表イナズマジャパンではなく地球代表アースイレブンで、アジア地区予選はグランドセレスタギャラクシーという宇宙大会の予選で、今まで戦ってきた相手は宇宙人だということを。

秋は真剣な顔で静かに聞いていたが、信助は盛大に驚いていた。


「えー!? どうして天馬たちが!?」

「宇宙人に対抗できるのは、アースイレブンだけなんだ」

「天馬……」

「俺、決めたんだ。俺たちで地球を……信助や秋姉やサスケ、みんなを守ってみせるって!」

「なんか天馬、キャプテンらしくなったわね」

「ん?」

「安心しているよ。だって天馬だもん。だから思い切りプレーして来てね」

「……うん!」


秋だって驚いただろうに、雷門中に行くときと変わらない微笑みで自分を見送ってくれる。それが天馬にとって何よりも嬉しく自分も安心して行くことができるのだ。


「……僕も行きたい」

「えっ?」

「ずっと辛かったんだ……。代表として、天馬たちと戦えなかったことが……」

「信助……」


迎えてくれたときはあんなに喜んでくれたのに、本当は試合を見る度に『何故自分はあのフィールドにいないんだろう』、『何故天馬たちと一緒に戦えないんだろう』という悔しさと葛藤があったのだろう。


「天馬の力になりたいんだ。だから僕も連れてって! お願いだから!」

「……うん! 明日二人で行ってみよう! 黒岩監督の所に。もしかしたら『いい』って言うかもしれないし、ねっ、信助!」

「天馬……!」


信助の熱意を天馬は受け止め、黒岩に直談判しに行こうと決めるのだった。



☆☆☆☆☆


好葉は以前も来ていた動物園のふれあい広場で、ご飯を食べるウサギのそばに来ていた。


「おいしい?」

「――可愛いね、ウサギさんたち」

「あっ。葵さん……」


タイ戦前の出来事や少し自信がついたおかげか、好葉はやってきた葵に初めと比べて避けることはなかった。


「やっぱりウチ、宇宙に行かなきゃいけないのかな……?」

「宇宙かぁ……なんかちょっと怖いけど、みんなを助けるためだもんね。天馬ってちょっと頼りない所があるから、私がマネージャーとして付いていなきゃって、つい思っちゃうんだよね」

「…………!」


葵だって宇宙という未知の場所に行くことに不安はあるのに、彼女らしい理由で宇宙に行くことに好葉は目を見開いた。



☆☆☆☆☆


さくらは実家に戻り、両親に事情を話した。オーストラリア戦の試合を見に行ってから、二人はさくらにサッカーを辞めることを強制せず、アジア予選突破した娘を誇りに思っていた。


「今度は何? 宇宙へ行くですって?」

「ハッ! だったら私たちも、宇宙からの中継を応援しないとな!」

「まっ、普通そういう反応だよね……」


母・野咲かえでも、父・野咲成一も冗談だと思って笑い合っているので、さくらは当然だと思い溜息を吐くと立ち上がる。


「パパやママになんて言われたって、私輝いてみせるんだから! 宇宙で一番!」

「「…………?」」


堂々と人差し指を立てて宣言するさくらに、二人は再び困惑して顔を見合わせるのだった。
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