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□待ち人がいるから、僕もいる
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――それから残りの水槽も回ったあと、最後に寄ったのは定番のお土産屋だ。今日の記念は勿論、他のキョウリュウジャーのメンバーに何かお菓子を買おうとしているのだ。
「このクッキー、いろんな魚の形をしているね。ダイゴさんたちのお土産にしようよ」
「へぇ。魚だけじゃなく亀やイルカやクリオネ、それにヒトデまであるのか。量もみんなに食べるにはちょうどいいな」
「ウッチーさんの反応は教えてね。面白いの期待してる!」
「お笑い芸人じゃないんだぞ……?」
「意図しないから面白いの!」
それはお前もな、という言葉をソウジは飲みこみ、そして誤魔化すように会計へと向かった。
実際ソウジがミズキに初めて興味を持ったのは、学校で木から降りれなくなった仔猫を助けようとしたら、自分まで降りれなくなったという事件があったときだ。登ってすぐに高所恐怖症だと思い出し、足がすくんで降りれなくなったらしい。
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夕方になってソウジはミズキを自宅まで送るために一緒に歩いている。今も片手は自分の手を握り、片手はさっき水族館で買ったペンギンのぬいぐるみを大事そうに抱きしめているが、嬉しそうな顔をしている間にときどき周りを気にしている所がある。
「今日はいつもと違ってどこかソワソワしていたが、つまんなかったか?」
「えっ! ううん、そんなことないよ! とっても楽しかった!」
「俺が気づかないと思ったか? 事あるごとに周りを見ていただろ」
「ご、ごめんなさい……」
「……ストーカーにでも遭っているのか?」
「えっ? ううん、違うよ」
敢えて小声で言ったのだが、ミズキはキョトンとして否定した。これは嘘を言っているわけではないとソウジはわかった。伊達に友人から恋人になったわけじゃない。
「じゃあどうしたんだ?」
「ただ、デーボス軍が来ないかなって心配で……」
「デーボス軍?」
ミズキに言われたソウジはふと思い出す。言われてみればミズキとこうした休日や放課後デートの途中、もしくは部活の間にもデーボス軍が現れて駆け出したことが多い。思えば彼女を何度も蔑にしていたのだと気づいた。