□待ち人がいるから、僕もいる
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――お昼を食べたあと、ついに目的のペンギンの散歩ショーが始まる。あのあとすぐに移動したので最前列で待つことができた。


《それでは、可愛いペンギンたちのお散歩を始めまーす!》


アナウンスと共に柵から出て来たたくさんのペンギンたち。先頭の飼育員に付いて行く愛らしい姿に観客は大興奮だ。もちろんミズキもその一人である。


「見て見てソウジくん! みんな可愛いよ!」

「あまりハシャぐと、寄ってくれないぞ?」

「そ、それは困る……」


この水族館のペンギンはサービスなのかたまに客に近寄って来ることもあるのだ。客から触ってはいけないのがルールだし、ペンギンのほうも他の飼育員の監視はしっかりしているのでそれ以上の接触はない。しかし近くでクリクリの目を見つめることができるのがウリでもある。

ソウジに言われたミズキは静かになったものの、ペンギンに向ける目がとても輝いている。その目に惹かれたのか、一羽のペンギンがミズキに近寄った。


「か、か、可愛い〜!」

「ああ。そうだな」


ミズキにつられたのかソウジも笑っている。それはペンギンが可愛いからか、嬉しそうに笑う彼女が可愛いからか、真意はソウジにしかわからない。


「あっ!」

「っ、どうした?」


ハッと我に返ったように声を上げたミズキにソウジは少しばかり驚いた。ペンギンがもうすぐ最後尾が目の前に来るというのに、目線がキョロキョロと他の場所を――というか周りを見渡している。


「ミズキ? 最後のペンギンが通り過ぎるぞ?」

「えっ。えっと、ごめん」


すぐにペンギンに目線を戻したミズキ。そして再びペンギンの可愛らしさに笑顔も戻ったが、ソウジは怪訝そうにミズキを見ていた。
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