□行くぞ! 宇宙へ!!
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「信助!」

「来い!」

「だあああっ!」


天馬のシュートを信助は正面で受け止めて少し下がったものの、ゴールラインを割ることはなかったので霧野は声を上げる。


「ナイスセーブ、信助!」

「思いっきりサッカーやるって楽しいな!」

「天馬……! 僕も、スゴく楽しいよ……!」


ただこうしてサッカーをすることが楽しくて、その溢れんばかりの想いを胸に治めるように信助はギュッとボールを抱きしめた。


「そうだ、その楽しいって気持ちを忘れるなよ! それがある限り、お前たちは無敵だ!」

「なら私は、その想いを糧に成長するみんなを何がなんでも守らなきゃ!」


未知なる宇宙にだって、『サッカーが好き』という思いがあれば何も怖くない。束の間の使命を忘れて楽しくサッカーするみんなを、円堂と瑞貴は見守っていた。

黒岩は100パーセントの勝利を望むだけだが、瑞貴はみんなの可能性を信じている。



――楽しい時間はあっという間に過ぎて集合時間になった。選手たちは全員ジャージに着替えて宿舎の前にいる黒岩の元へ向かう。黒岩の両隣にはマネージャーのみのりと葵、コーチの瑞貴、見送りに来た円堂と豪炎寺と鬼道もいた。


「十二人……全員そろったようだな」

「松風天馬、神童拓人、剣城京介、瞬木隼人、野咲さくら、井吹宗正、鉄角真、真名部陣一郎、皆帆和人、九坂隆二、森村好葉、市川座名九郎――以上が、地球代表アースイレブンだ」


点呼を取る豪炎寺が告げたメンバーは、ここに全員そろっている。それぞれが覚悟を決めて宇宙へ旅立つのを決意したのだ。


「あの、宇宙船らしき乗り物が見当たらないようなんですが……」


ガコンッ!


「「「「「!」」」」」


真名部が不思議に思って尋ねると、どこからか機械音が聞こえてきた。全員が周りを見ると選手たちが寝泊まりしていた宿舎が動き、端にある海側の土手やオーシャンビューブリッジの地下から次々と横長の建設物が現れる。

宿舎とミーティング室も続けて動いて一列になると、地から現れたレールに従って動き合体すると、まるで新幹線のような乗り物になったのだ。


「な、なんじゃこりゃ?」

「スゴい……!」

「これって、電車?」

「列車型スターシップ・ギャラクシーノーツ号よ」

「ギャラクシーノーツ号……!」

「銀河連邦からもらった設計図を基に作られた、宇宙船よ」


驚きつつ見渡す鉄角や瞬木やさくらに、みのりが冷静にそう言うと天馬は復唱しながら見上げる。

すると天馬たちの目の前にあるギャラクシーノーツ号の扉が開き、中から現れたのは……。


「お、おばちゃん!?」

「そ、その格好、もしかして!」

「ああそうだよ。車掌だよ車掌。さあさ、のんびりしてる場合じゃないよ! もうすぐ出発だからね、早く乗った乗った! 忘れ物するんじゃないよ」

「は、はい!」


オレンジの車掌服を着た蒲田静音に天馬や葵たちは驚いたものの、いつも通りの彼女を見て天馬は苦笑するが、逆に全然知らない人より安心して乗り込む。


「天馬……」


次々とギャラクシーノーツ号に乗り込むアースイレブンを、狩屋の隣で信助は眉を下げて呟いた。


「行ってくるね」

「ああ」

「気をつけてな」

「あいつらを頼んだぞ」

「うん!」


選手が全員乗ったのを確認したあと、瑞貴もまた円堂と鬼道と豪炎寺に見送られながらギャラクシーノーツ号に乗り込んだ。

中に入ったアースイレブンと葵は先頭車両に移動するようにと静音に言われた。それまで通ったミーティングルームや部屋は変わらないが、先頭車両は初めてなので物珍しそうに見渡す。


「いよいよ、出発だな」

「ええ」

「よーし……行くぞ、宇宙へ!」

「「「「「オウッ! 出発進行!」」」」」」


神童や剣城たちは未知なる宇宙への旅に少しワクワクしていた。そして全員が座席に座り、拳を上げる天馬のかけ声に声を上げた。

ギャラクシーノーツ号が動き出すと、先頭車両の前に宙に浮かぶレールが現れた。それに乗ってギャラクシーノーツ号は宇宙へと旅立っていくのだった。


「がんばれよー!」

「負けるな、みんなー!」

「ん? あれ? 信助くん……?」


三国や霧野たち雷門中サッカー部は手を振って見送る中、狩屋は隣にいた信助がいないことに気づいて不思議に思った。


「天馬……」


人知れず、信助はいつの間にかギャラクシーノーツ号のキッチンに忍び込んでいるのだった。










☆コーチの 今日の格言☆



それぞれの役目を果して宇宙一になって帰って来たときにもう一度会おう



以上!!
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