拍手ログ

□ポイズンアーマー秘話
1ページ/1ページ



地下800メートルを走るアングラトレイン

一目で堅気ではないと分かる者達がひしめく車内で、小松とココはお互いの修行話に花を咲かせていた。


「サンドガーデンでそんな事が…、本当に大変な旅だったんだね、小松君」

「はい!それはもう本当に!あ、でもトリコさんとゼブラさんのお陰で、無事生きて戻ってくる事ができました!」

「当然だよ。もしも小松君の身に何かあったら、今トリコは毒入りの酒を飲まされてるはずだ」

「ははは!またまたぁ、ココさんってば相変わらずチクリとしてますねぇ」

「ボクは本気だよ、小松君」

いやぁ、お気遣いありがとうございます!となぜか礼を述べてから、あ、そうだ、と小松は前のめりになってココを覗き込んだ

「そう言えばココさんもされたんですか?暑さに適応するための修行」

その期待に満ちた視線をにこやかに受け止め、プラチナバナナ100%のジュースをゴクリと飲んでから、ココは爽やかに「もちろんだよ小松君」と微笑む

「ボクの場合はね、暑さ、寒さ、それに低酸素に適応する方法を1度に見つける事ができたんだ」

「うわぁ!凄いですね!一体どんな修行をされたんですか?」

あぁ、くるな、とトリコは思った。


「うん、『ポイズンアーマー』って言うんだけどね」


ほら来たぞ

トリコはウイスキーをグビッと煽る。


「ボクの体質を活かして、身体の回りに毒で膜を張るんだ。この技は『毒膜』といって、今までも使っていた技なんだけど、ボクはこの毒膜を更にアーマー、つまり鎧へと進化させたんだ」

「進化ですか!凄いですね!」

「ありがとう。今までは外部に触れる部分も液体のままだったんだけど、その一番外側の部分を血小板やカルシウムでコーティングさせる事に成功したんだ」


この自慢を、例の会長のフルコース探索の際にトリコは1度聞いている。

「例えば、暑い場所へ行く場合、このコーティングが身体から水分の損失を防ぎ、皮膚の乾燥も抑制してくれる。それに、皮膚と接する部分の毒を循環させ続ける事によって、表面に掻いた汗などに溶け込んだミネラル成分も再吸収できるんだ」

あれはどこのビオトープだったか

サンドガーデン程ではないにしろ、砂漠地帯の中を環境に適応しながら歩き続けていたトリコは、ふと後ろからガシャンガシャンと、何か硬質の鎧のようなものが擦れ合う音を聴いた。

不思議に思って振り返った彼が、いつの間にか変身していたココを見付けた時の衝撃は筆舌に尽くしがたい

(トリコはバジュルコッコと戦った時のココの様子を見ていなかった)

「更に、皮膚近くの毒を流動させ続ける事で、極寒地に於いても一定の保温効果がある事も発見したんだ」

おお〜!凄いですね!とさっきから感心してばかりいる小松に「お前は実物を見てないからそんな事が言えるんだよ!」とトリコは脳内で突っ込む

小松の素直な賛辞を受けて、ココは「ありがとう」と満更でも無さそうだ


あー

やってらんねぇ

でもあんまり突っ込んだ結果、曰く繊細な心が傷付いてカジノを目前に回れ右されちまっても困るしなぁ


これはもう、飲むしかない!



トリコは新しいウイスキーのボトルに手を伸ばした。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ