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□3分クッキングその3
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「も〜、ココさんが途中で話しかけてくるから、どこまで歌ったか忘れちゃったじゃないですか〜。」
途中で話し掛けられ、パスタの残り茹で時間を見失った彼女は、さり気なく責任転嫁を試みようとしている。
そんな彼女をチラリと見て、ボクは「あと1分12秒だよ」と答えた。
「へ?」
「パスタの茹で時間はね、パスタの太さによって変わってくるし、そもそもここは高地で沸点が若干低い。その日の気温と湿度で乾麺の状態も微妙に変化するし、それらを総合的に判断して茹で時間は計算されるべきだ」
それと、ほら、とパスタが茹でられている鍋を示す。
「沸騰するお湯の動きを見てごらん。下からの熱エネルギーを受けて上昇水流が発生し、一端水面で流動的に方向を変えてから、また下へと循環していく。この水独特の動きが持つ法則性なんか、修行中の今注目しておくべき部分じゃないのかな?」
と、言いながら見下ろした頭のつむじの上からは、プスプスと煙のように電磁波が立ち上っていた。
ボクはそれをしばらく眺めてから「はい、1分12秒」とコンロのスイッチを切った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ねぇ、キッスさん」
「なんだ」
「パスタの王様はアルデンテって言いますけど」
「本当はココさんだったんですね」
「?」
(修行中とありますので、時間軸はsopaの辺りだと思われます)