sirena2
□suelte
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【運勢】
その朝は、いつものように始まった。
朝日が差し込むベッドの中で、どちらからという事もなく目を覚ます。
全く同じリズムで生活をする2人は、だんだんバイオリズムもシンクロし始めたのか、最近はそろそろお茶にしたいな、とか、ちょっとお昼寝がしたいな、なんて思うタイミングが被るようになってきていた。
もしかして、ココさんも?
もしかして、ナナちゃんもかい?
そう言って笑い合えば、同じリズムで生きている事がどうしようもなく幸せだと感じてしまう。
だから、ナナはいつものように目覚めて、いつものように彼を見つめた時、ナナの起きた気配に導かれるように瞳を開けたココは、いつものように甘い囁きで朝の挨拶をしてくれるとばかり思っていた。
「っ!?」
だが、実際は全く違っていた。
突然目を見開いたココは慌てた様子で起き上がると、ものすごい勢いでナナの顔をのぞき込んできたのだ。
あっけにとられるナナを無視して、頬を両手で抱え瞳の奥をのぞき込んでくるココの瞳は、朝からその力をフルパワーにさせているのか、ほどんどトパーズのような色合いになっている。
それから、彼はナナの体をひっくり返すと、パジャマまで捲りあげて隅々まで点検のような事をし始めた。
「あの、ココさん?」
指先1本1本まで丁寧に調べられて、ナナはなすがままになりながらもとりあえず彼からの説明を待つ。
「怖がらないで聞いてね」
そうして、たっぷり5分は彼女の体中を調べたココは、神妙な面持ちでそう話を切り出した。
「受難の相?」
こくりとココは頷く。
「今まで見た中で、一番酷い」
これが彼でなかったら、何言ってるんですかと笑い飛ばしてしまえるのだが、いかんせん彼は正真正銘の売れっ子占い師。
的中率97%を誇る彼がそう言うのだから、恐らくきっと本当にそうなのだろう。
「それで、えっと、私はどうすれば」
とりあえずそう聞いてみると、ココは真剣な表情でしばらく思案をしていたが、すぐに「これをすれば大丈夫という事があるかどうか、今のところ分からない。ただ、今日はどこにも行かない方が良い。非日常を極力回避する。それが現時点でできる最善の策だ」と答えた。
「そこを動かないで、あぁ、いや、ボクから離れない方が良い。」
ちょっと支離滅裂な事を言いながら朝食の準備を始めようとするココに不謹慎にも笑いながら、ナナは一緒に朝食の準備をする。
そして何事も無くいつもの朝食を食べている最中に、その電話はかかってきた。