IGO大学体育会美食道部
□蜜月のrevenge
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「ココ!お前、さすがに事後報告はあり得ねぇだろ!?」
「おま!信っじらんね!オレらがどんだけ今まで協力してきてやったと思ってんだよ!」
「はっはっは!やっぱ組手はいいなぁ!オイ!」
「だからゼブラ!お前はなんでこっちまで攻撃してくんだよ!?」
何やら言い合いながら突如始まった乱稽古にギャラリーがどよめく。
「すげー。本番直前に激しいな」
「さすが四天王」
「キャー!ココ様格好いい!」
亜弥は乱稽古自体は軽くスルーして、あれ?という顔で小松を見る。
「ココさんから、聞いてませんでした?」
小松はカードを両手で握ってふるふる首を振り「さ、叫ぶタイミングを逃しました」と可愛らしく苦笑いをした。
「え〜!?ココさんが『共通の知人には夫から報告するのが筋だ』って言われてたんで任せっぱなしにしてたんですけど…」
ははは、とも、たはは、とも聞こえるような乾いた笑い声を発した後で、小松は気を取り直し、3人が投げ捨てたカードを拾う。
カードの裏にはそれぞれ亜弥からのメッセージが書いてあるので、まとめて持っても混同する事はない。
「多分、照れ半分、警戒半分といったところ、だったんじゃないでしょうかね?」
もう一度カードを眺めながら、溜め息混じりに小松はそう呟いた。
「え?」
「ココさんはこの作戦、案外かなり本気だったのかもしれませんよ」
「作戦…」
「僕達4人、お2人の事はずっと応援してきたんですけどねぇ」
「ははは…。本当に、色々とご迷惑おかけしました」
確かに、在学中も、卒業してからも、結局2人の関係については誰にも何の報告もしてなかった。
だが、このリアクションを見る限りは、ていうかどう考えても、バレバレの筒抜けだったに違いない。
かと言って、「いつから気付いていました?」なんて事を今更聞けるはずもなく。
「小松さん」
「はい?」
「今だから言いますけど」
「はい」
「ココさんって、結構小心者で、嫉妬深いんですよ」
「ははは、そうですね」
「あれ?今更でしたか?」
「もし仮にボクとココさんで亜弥さんを奪い合ったら、勝てないって思ってたんでしょうね」
「小松さんは良い男ですよ〜」
「はは、ありがとうございます」
小松はちょっと照れて笑うと、「じゃぁそろそろ行きますか」と呟いて、1つ大きく息を吸った。
「皆さーん!時間ですよ〜」
長年親しんできたタイムキーパーの声に全員の動きがピタリと止まる。
「さぁ、サニーさんは早く着替えに行って下さい。
トリコさんとゼブラさんは受付まだですよね?僕はドリンク手配してきますから、亜弥さんは皆さんの荷物を纏めて、いつものように西側ゲート付近にベースを作りましょう」
テキパキと指示を出す小松と、大人しくそれに従い始めた四天王に、亜弥はやっぱり小松さんが最強だな、と改めて痛感した。
「あ、亜弥」
色帯時代ならまだしも、黒帯になって実力も拮抗している3人との乱稽古に息を乱していたココが、それでも亜弥の元へ小走りに駆けてくる。
「はい」
しっかしココさん、嬉しそうに呼び捨てするなぁ。と亜弥は思う。
呼び捨てにしたかったんだったらいつでもすれば良かったのにと思うが、まぁそれこそ今更だ。
「カード、予備がある?」
「一応ありますけど…。まさか監督とか会長にも連絡してなかった訳じゃないですよね?」
「まさか。目上の人に悪ふざけなんてしないよ」
後ろから来るアイツ用さ
「後ろ?」
「よ、お2人さん久しぶり!その様子だとまだ付き合ってんの?すごいな。てかそろそろ結婚しちまえば〜?」
「そうだな鉄平、お前の言う通りだ」
亜弥の背後に現れた鉄平は、ココがそう言いながら渡してきたカードを見て、次の瞬間彼に襲いかかる。
あれ?ついさっき似たような光景を見たなぁ、なんて亜弥は現実逃避をしながら、皆の荷物をまとめて持ち上げた。
「オイオイお前!オレを何だと思ってんだ!?キューピットだぞ!?キューピット!」
「何を言ってるんだ?その髪型の事か?」
「それを言うならキューピーちゃん!って違う違う違う!何言わせてんだよ!?ってか何だよこの写真!?なんでお前らこんなちょこっとしか映ってねぇの?」
「綺麗な古城だろう?日本のにわか造りのチャペルとは違う、15世紀イタリアの名作だ」
「んな事聞いてねーよ!、どうせニヤケた面、見られたく、なかったんだろうが!」
「失礼だな。ただ顔のアップだけの構成は、品性に欠けると、判断したまでだ、よ!」
だんだん激しさを増す組手を小松のように止める策を持たない亜弥は、2人を無視してさっさと荷物を移動させる事にした。