IGO大学体育会美食道部

□葉月の攻防戦(またはコミックスへの道のり)
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(会話文のみです)


〜8月某日〜


「キッスさん…」

「わん!」

「私、人生のフルコースが1つ決まりました…。
 知ってます?トリコに出てくるんですよ、人生のフルコースっていうのが。
 もちろん、私にフルコースなんてないですよ?ていうか集めるつもりもないですけど。
 でもメインに相応しい食材をついに発見してしまいました。これはもの凄いです!」

「わふ?」

「御来光の後で食べるカップラーメンですよ!

 夜通し山を登り続けた挙げ句に極寒の中ただひたすら日の出を待って、ようやく開いた売店に駆け込んで食べたあのカップラーメンの最初のお汁のあの一口…。
 五臓六腑に染み渡るあの温もりと生きている喜び…。文句無しで今まで生きてきた中で一番おいしかったです!」


「わ、わふ…」

「いや〜!もうね、本当に死ぬかと思いましたよ!
 どう思います?初心者を連れて徹夜で登山って?後で調べてみたら、普通は山頂付近で1泊するらしいんですよ。徹夜コースは『体力のある人向け』のコースだったんですよ!?

 なにが『ボクは前にも一度登った事があるけど簡単だったよ』ですか?
 そもそも体力に差がありまくりなんですから!
 ココさんの話を鵜呑みにした私がバカでした」

「きゅ〜ん」


「あ、ごめんなさい、怖かったですか?ちょっと興奮しちゃいました。

 でも、ココさんってば酷いんですよ?
 結局、『山登りはご褒美欲しさにするものじゃないだろう?』って、じゃあ何の為に登ったんだ?って感じじゃないです?」


「わん」

「あ〜。コミックス手に入れるのがこんなに大変だとは思いませんでしたよ〜。
 こんな事なら何も相談せずにさっさと全巻うっかり揃えちゃえば良かったなぁ…。
 あんなやり取りの後で強引に買い揃えるのはむしろ怪しさ倍増ですよね…?
 はぁ〜」

(かといって、海外サイトを見るのはどうかと思うし〜。
 てかココさんそういうのに厳しいし〜。
 立ち読みしようにも、田舎過ぎて素性が知れてるからそんなの無理だし〜
 てかコンビニまで遠いし〜)


「わふ?」

「でも1番無理なのは携帯で夢小説書いてるなんてココさんにバレちゃう事なんですけどね〜」


「わふわふ」

「キッスさん…慰めてくれるんですか?
 ありがとうございます〜!も〜!大好き!!
 あ、世間では、私みたいな人を『カクレ』っていうらしいですよ

 家族に内緒でこういう事してる人の事らしいんですけどね。

 まぁ、とにかく私、諦めませんから!いつか必ずコミックスを揃えてみせますから!」

「わん!わん!」

「ありがとうございます!キッスさん!」

 あ、そろそろココさんが帰って来ますね。
 今日は午後から地区の草刈りに出てるんですよ。
 じゃ私、お茶の準備しに行ってきますねー。また後で散歩に行きましょう」


「わん!」


※ ※ ※ ※ ※ ※

「お疲れ様です。はい、お茶」


「うん、ありがとう」


「御来光見た次の日に草刈りとか、本当によくできますよね」

「刈るのは機械だからね。それにしても綺麗な御来光だった。」

「私には売店の方が輝いて見えましたけどね」

「ははは」

「笑い事じゃないですよ!?もぅ二度と行きませんからね」

「確かに。一生に一度行ければ十分だよ」

「(はぁ〜、今コミックスの話題出したら、今度は日本アルプスとか行く羽目になりそう…)」

「じゃ、行こうか」

「行かないですよ!?絶対に行かないですよ!」
「?庭のイチジク、好きだよね?」

「あ?え?イチジク?はい、もちろん。もう熟れてました?」

「さっさ帰り際に見たら1つ良さそうなのがあったよ。」

「お、初物ですね」

「うん、行ってみよう」
「(やれやれ、次のタイミングはいつになる事やら…トホホ。)」
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