sirena
□despues
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〜後日談〜
その後、ナナは一旦自室に戻ると、ふとスツールに違和感を感じてそこを見た。
そこには例のアクセサリーが入った箱と帽子が置いてあり、下にはサンダルが揃えてあった。
途端にナナの顔面から血の気が引いていく。
ホラー映画で殺人鬼がいきなり背後から襲いかかって来た時くらいの引きっぷりだ。
ヨロヨロと壁に手を付きながらリビングへと戻ったナナは、そこで当たり前のように買い出しの整理をしていたココにおずおずと話しかけた。
「あの…、今部屋を見たら、なんか色々あり得ないものが置いてあったんですけど…」
「あぁ、あれかい?」
ナナには信じられない程高い位置にある収納棚を活用しながら、ココはさらりと答える。
「下着は見つけられなかったんだ。ごめんね」
ごめんね、なんて言われても、ナナはどう返事をしたら良いのか分からない。
まさか、いや、しかし部屋には動かぬ証拠が…でもそんな事が現実に可能なのか…。
なんてナナの脳内の葛藤が手に取るように分かったのか、ココが楽しそうに笑う。
「ボクもキッスも今回の件で随分成長できたみたいだし、次は24時間以内に見つけ出せる気がするよ」
ナナは、叫べるものならとっくの昔に叫んでいた。
良く言えばイケメンスマイル、別の言い方をするならしてやったりというその顔に、ナナは恐怖すら覚える。
「詳しい話、聞く?」
そんな甘い囁きにブルブルと首を振るナナに「そうか。じゃあこっちを手伝って貰っても良いかな?」と優しく話題を転換しながらココはひっそりと笑う。
グルメフォーチュンの駅長に教えて貰った街の海岸で靴と帽子は簡単に見つかった。
更に、実は例のハンドバックはナナがきちんと持っていた。
中の地図もハンドバックも酷く痛んではいるが、まだ処分してはいない。
地図とハンドバックも探してあげようか?なんて聞いてみるのも面白いかもしれない。
ココの千里眼を心底怖れて大人しくなったナナの頭を見下ろしながら、ココはそこを優しくポンポンと撫でた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
〜第一部 完 〜
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