sirena

□dia
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【日中】

キッスは、すっかり日の昇った空を見上げてから、ココの家の扉に視線をやる。

ナナを見つけたあの夜から、3度日が昇った。
 
しかし2人とも1度も外に出てきていない。

動けない状態になっている、という可能性はないはずだ。時折人の気配が動いている事は感じられていた。

何かしら異変が起こっているのは間違いないのだが、さてどうしたものか。

強行突破も視野に入れ始めていたその時、3日ぶりに玄関の扉が開いた。

「やぁ、キッス。調子は戻ったかい?」

そこには、爽やかに笑うココの姿があった。
 
3日間一歩も家から出といなかった事など全く関係ない様子で洗濯物を干し始める彼は、むしろ上機嫌のようだ。
 
キッスは、いつもの習慣でシーツの片方をクチバシでくわえてそれを手伝う。
 
ここ最近、洗濯をするのはいつもナナだったので、殆ど条件反射になってしまっていた。

「ありがとう、キッス」
 
ココは、優しく微笑んでキッスの首もとを撫でてくれる。
 
その穏やかな瞳を見ただけで、キッスは心が満たされて行くのを感じた。

 「ちょっと出かけようかと思うんだけど、付き合ってもらっても良いかい?」
 
シーツを干し終えてすぐ、ココからキッスにそんな問いかけが成される。
 
もちろん、キッスに断るなどという選択肢はない。
 
が、今から出掛けるとして、ナナはここに残るのだろうか?
 
首を傾げてココを見れば、キッスの考える事などお見通しといったようにココは答えた。

「ナナちゃんかい?ちょっとキツいお仕置きだったからね。きっとまだしばらくは動けないはずだよ」

少し思わせぶりに笑ってからココはキッスの背に乗る。

「仕置き」という言葉を聞いた事なら何度かある。

ハントの最中に、無謀にもココにちょっかいを出してくる愚かな奴らに対して制裁を加える時に彼が使う言葉だ。

 
つまり、ココを怒らせてしまった訳か。
 
…ナナならしかねないな。

 
キッスはその単語をココがナナに対して使った事に一寸驚いたが、そういう事もあるのだな。と納得する事にした。

「さて、どれから行こうか」
 
キッスの背に跨り、ココは楽しげにそう言う。
 
どうやら行き先は複数あるらしい。
 
その様子は、今まで満たされていなかった部分が満たされたような、欠けていたピースが元の場所に返ってきたような、満足感に満ちている。

ココのその様子はキッスを大層満足させた。



そうしてキッスは、新しい言葉を1つ覚えた。

「よし、リードラゴンから行こう」
 
その言葉を合図に、キッスは1つ羽を羽ばたかせ、次の瞬間には大空の中、風を見つけてその上に乗っていた。
 
ナナを探す旅はなかなかに骨が折れたが、おかげでキッスは自分が成長できた事を感じている。
 
そしてそれは、それからのハントで実証される事となった。
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