sirena
□amigo
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【友達】
ココの出発を窓から見送ったナナは、言い付け通り用事を済ませてから、雑誌やちょっとした飲み物を持って自分の部屋に入った。
ちゃんとトイレだって行ったし、完璧だ。
まさかそこまでココに指摘されたらどうしようかと思ったが、さすがにそれは品がないと判断したのだろう。
今回は彼の品の良さとやらに感謝感激雨あられだ、とナナは冗談めかしながらベッドに倒れ込み、雑誌をパラパラと捲り始めた。
程なくして、家の玄関が開く音がする。
さすがに少し緊張してしまうが、大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせてナナはベッドの上で仰向けになった。
動かない為にはこの体勢が一番楽だと判断したからだ。
目を閉じて階下に耳を澄ませれば、なぜか2人以上の声が聞こえてくる。
どうやらやって来たのはトリコだけではないらしい。
やがて、階下はまるで大人数の宴会のような騒ぎになった。
時折聞こえるココの声も、喧騒にかき消されそうにはなっているが、いつものすました彼からは想像できない程フランクな響きを持っている。
あぁ、良かった。
やっぱり持つべきものは旧知の友だ。
ナナはそんな事を思いながらそっと目をとじた。
―――――――――――
次にナナが目を覚ました時家はすっかり元の静けさを取り戻していた。
「信じられない…」
ナナは上半身を起こし、自分しかいない室内で1人呟く。
いくらあの体勢が楽だったとはいえ、あのシチュエーションの中自分はうたた寝をぶっこいたのだ。
あぁ、もしかしなくてもココさんは張り詰めた緊張感の中で接客にしてくれていたのに、そのすぐ近くで私がこんな事になってたとは夢にも思ってないだろうなぁ。
そんな事を考えながらナナは階下に降りた。
粗方片付けてある台所を見て、ナナは驚く。
本当に、あれだけココが準備しておいた料理がきれいさっぱりなくなっていたのだ。
文字通り家中の食材がたべられてしまっているので、このままではナナの昼食はおろか、ココの夕食だって準備できない。
これは、買い出しに行くしかないぞ
そう思ったのと同時にキッスの帰ってきた音がした。
ナナは外に出てキッスを出迎える。
「お帰りなさい。お疲れ様です」
キッスに話を聞いたところによると、ここに来たのは大きい男と小さい男の2人組だったらしい。
大きい男は多分トリコだろうが、では小さい男は?
残り2人の四天王のどちらかだろうか?
しかし確かゼブラという人は服役中のはずだ。
となると残り選択肢は1つ…
と、そこまで考えてナナは思考を放棄した。
どうも最近の自分は勝手に悩み過ぎて墓穴を掘る事が多い(今までの人生ずっとそうだったんじゃ?というツッコミがどこかから聞こえてきそうだが)
ココさんが帰ってきたら聞けばいいだけの話だ。
と結論づけて、ナナは早速キッスに買い出しのお願いをした。