sirena
□diabolos
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【悪魔】
目の前に、白い天井が見える。
壁も、白い。
どうやら自分はベッドに寝かされているらしい。
久しぶりに布団に横になった気がする。
シーツのさらさらした感触が気持ちいい。
ほぅ…っと息を吐き出す。
(ここは…病院?)
白い天井に白い壁、無機質なこの雰囲気から、そう想像する。
(あぁ…なんかイヤな夢を見てた気がする)
もう1回寝直そう。
なんだか体に力が入らなくて、とにかくまだ眠たくて、私はも楽な体勢を探してもぞもぞする。
二度寝万歳だ。
というか、今はとにかく体を休めなくちゃいけない気がする。
無意識の内に首の傷をかばって、右向きに寝返りを打つ。
首の傷?
…あぁ、嫌だ
思い出したくなんてないのに。
考えちゃダメ。
もう1回寝たいのに。
今はまだ何も考えたくないのに…。
必死に眠ろうと努力すればする程皮肉にも思考はクリアになっていき、諦めた私はもう一度ため息を吐くとゆっくりと起き上がった。
そこは、ベッドと小さなテーブルしかない、小さな小さな部屋だった。
壁も天井も白で統一されている。
ご丁寧にテーブルもベッドのパイプも、シーツだって白だし、ふと自分を見れば、いつの間に着替えさせられたのか、病院で支給されるような前開きの短い浴衣のような服だって真っ白だった。
窓もなく、時計もない部屋では、今が何時なのか、自分がどんな建物の中にいるのかもわからない。
そっと首に手をやれば、傷のあるであろう場所には包帯が巻かれていた。
あの時、最後に見たのは、海に浮かぶ荒れ地の島…
最後に聞いたのは…確か第1なんとか…。
一体、何がどうなってるんだろう?
現状はさっぱり理解できてないが、でもとにかく、あんな怖い経験、もう2度とごめんだ。
それだけははっきりさせておこう。
別に毒の影響もないみたいだし、ここは一刻も早くキッスさんの所へ帰らせてもらうに限る。
うん。
無理やりにでも帰ろう。
とりあえず、この部屋の外に出られるかどうか試してみようとベッドを降りようとしたのとほぼ同じタイミングでドアが空気の圧縮音と共に開いた。