sirena
□ayudo
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【助け】
恐竜は、ドスドスと土煙を上げながら交差点を律儀に回っていき、あっという間に見えなくなってしまった。
(どこで操縦してたんだろ?あの発言内容からして遠隔操作じゃないだろうし、顔の辺りに操縦席があったのかな?
…いや、最近の技術はすごいから、遠隔からでもカメラの映像と照らし合わせればあんな自然な会話も成り立つ、かな?)
っていうか、今の捨て台詞なに?どう返せばよかったの?
見逃してやる=食べないでおいてあげますよ
って事?
それとももしかして
見逃してやる=このアトラクションの利用料金は請求しませんよ
って事?
す、すぐに発想がお金に結び付くなんておばちゃんっぽいって思われるかもしれないけど、良いじゃない。
おばちゃん万歳!お得商品万歳!
私は勝手に心の中で啖呵を切る。
(アラサーを舐めたら後が怖いよ〜!とにかく、企画通りに動いてなんかやりませんからね〜!)
いや、いい年してるならむしろ運営スタッフの苦労に配慮してなるべく彼らの欲しい絵が撮れるように協力するべきなんだろうけど。
そこでようやく隠し撮りの存在を思い出した私は、慌てて居住まいをおすましモードに戻す。
おっと危ない
変な顔がアップにされないように気を付けなくちゃ
よし、じゃあ、改めて
…
……
どうしよう?
私は独りで腕を組んで悩む。
とりあえず、先に進むか?
いっそあの恐竜の後をついて行ってみるか?
そんな事を考えながら土煙の方を見ていたら
「イタタタタ」
砂ぼこりが目に入ってしまった。