sirena
□El sol
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「さ、沢山歩いて疲れただろう。今夜は早めに食事を作るよ。何かリクエストは?」
ココは帰宅後すぐにそうナナに聞いてくる。
元気だなぁ、とナナは関心しながらちょっと考えて「さっぱりしたものでお願いします」と答えた。
買ってもらった品物をそれぞれ所定の位置に置いてみたり、新たな置き場所を考えてみたり…。なんとかそこまではできたが、ナナはもうそれでヘトヘトになってしまい、行儀が悪いとは思いつつもソファにだらしなく横になってしまう。
ちなみに食事の支度を手伝うのは、逆に料理の味を落としてしまう気がしてついつい遠慮してしまっていた。
そんなナナを咎める事無くリクエストに応える為キッチンに行こうとしたココは、何を思ったのかこちらに戻って来る。
「ナナちゃん、しんどそうだね。大丈夫?」
一旦パッと起き上がってナナは答える。
「大丈夫ですよ。これは肉体的疲労じゃなくて精神的疲労が大部分なんですから」
ナナの答えにココはくすりと笑った。
「そんなに買い物は苦手?」
「ん〜、沢山の中から選ぶのはあんまり得意じゃないかもしれないですね〜。2択ぐらいが私には丁度良いんじゃないかと思います」
あ、でも逆にインスピレーションでパッと思い立ったら買っちゃう癖もあるんですけどね
そう告げるナナに、なぜかココはうん、と頷く。
「直感を信じるのは大事な事だよ」
そんな占い師らしいコメントをしてから彼は今度こそキッチンへと向かって行った。
―――――――――――
「ナナちゃん?ナナちゃん?」
優しく話しかけられてナナは目を開ける。
「あれ?すみません、私寝ちゃってました…?」
気が付くと辺りは薄暗くなっている。
何だか体が火照っているみたいで、ナナは体内の熱を少しでも下げようと熱い溜め息を吐いた。
「熱があるね」
ココはそう言いながらソファの前に膝を着く。
「直接日に当たった部分が熱を持っている。すまなかったね。もっとボクが気を付けていれば」
確かに、さっきまではちょっと火照っていた程度だった頬や手先が、今は熱を伴ってヒリヒリと痛むまでになってしまっている。
「そんな、こんなただの日焼けで、しかも私が悪いのに謝らないで下さい。」
とは言え、確かに酷い日焼けをしてしまったのは確からしい。そういえば最近あんなに長時間屋外で過ごす事はなかったなぁ、とナナは思う。
「久しぶりに太陽の光浴びて、ちょっと肌がびっくりしたんですよ」
そう結論付けても、ココはまだちょっと済まなそうに日焼けした箇所を見ている。
「きっと、美味しい物を沢山頂いたらあっという間に良くなると思います!」
敢えて元気良く答えて、ナナは食卓へと移動した。
ふと手を見ると、確かに痛い部分は赤みがかってしまっているみたいだが、この薄暗闇の中では良く分からない。
「この明るさで、そこまで分かるなんて凄いですね」
そう言えば、ココはハッとしたように部屋の電気を点けた。
あ、しまった、とナナは反省する。
「すみません。私が寝ちゃってたから今まで電気が点けられなかったんですよね?食事の支度大変だったでしょうに、すみませんでした」
電気を点けて、すぐに料理の盛り付けにかかっていたココは、ちょっと困った顔をして「そんな事はないよ」と少し笑った。
くう〜。
本当に優しいなぁ、この人。とナナは唸る。
彼は町でも人気者、というかかなり有名人だった。
中には「様」付けで呼ぶ者もいたぐらいだ。
こんな人の家でしばらくとはいえ厄介になるなんて、本当に恐れ多い…とナナは思う。
かといって、じゃあ迷惑かけない内に早く独り立ちできるかと言われれば、まだIDも持ってない、グルメ細胞保持者から身を守る策も見つけられてないような段階じゃあまりにも無謀で、というか今ナナは日焼けが正直かなり痛い。
前途はまだまだ多難だなぁ。
そんな事をナナが考えていると、「ナナちゃん、食べる時は目の前の料理に集中しなくちゃ」とココに突っ込まれてしまう。
慌てて「すすすすみません!」と答えて食事に集中しようとするナナの脳裏にふと疑問が浮かび上がった。
なんか、私の思考回路がかなり読まれてない?
まさか!これが占い師の実力、なのか?
なんて思いながらナナがココを見ると、またしても見透かされてしまったように「顔に書いてあるんだよ」と言われてしまう。
ナナは「う゛〜」と唸るぐらいしかできなかった。