BOOK1
□monotonous
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ホテルに着くと、待ちくたびれたようにジョンヒョンが車体にもたれかかってた。
「すいません、呼び止められちゃって・・・女の子に・・」
「かあいい子だった?今度紹介してよ」
「いやですよ」
言いながら、寄り添うようにエントランスをくぐる。
どちらともなく触れた手を重ねる。
二人っきりになると、途端に甘えたになる癖も、思えば自分がつけたのかもしれない。
気にかけるようにいつも横に並んで。
隣になれば手を繋ぐように手の平を彼に見せるように差し出してた。
少しずつ慣れてくれば、それは習慣のようになって。
いずれは自然と手を繋ぐ関係になる。
そういう関係に、自分たちはもうきてしまった。
ミノにとってそれが、遊びだったわけじゃない、
どこまでできるか、試していたつもりもない。
(ただ・・・・。)
受付のパネルの前で、明かりのついてる部屋を選んでいるジョンヒョンの後ろで、浮かない顔をしていたミノに気づいて、ジョンヒョンは後ろを振り返った。
「・・どったの?」
「え・・・?いいえ?」
「どこにする?俺、この部屋入ったからこっちがいい」
「誰と入ったんです?」
「おまえとに決まってんだろ」
「入りましたっけ?」
「忘れちゃったの?」
正直、部屋なんていつも気にしてない。
ジョンヒョンは決めた様にパネルに手を置く。
「・・・やっぱり、やめましょう」
え?という声と同時に、ジョンヒョンが振り返る。
そして同時に、するりと引き抜くようにパネルの上に置いてた手を、だらりと下に落とした。
「俺は・・・・どっちでもいいけど、」
精一杯の強がりみたいにそう言われた言葉に胸が痛んだ。
けど、僕は決めたんだ。
この人を、僕が独占してちゃいけないんだ、って。
その羽根を僕が捥いでしまう前に…。
彼を自由にしてあげなきゃ…。
兄さんはきっと、羽根がなくても平気だよって僕に笑って云うだろうから。
その笑顔は紛れもなく優しさなのにどうしてだろう。
僕にはそれが、時々怖く感じてしまうのは――。
「・・ミノ?」
「今夜は…帰りましょう」
そう言った僕の言葉に、彼が奥歯を噛みしめたのがわかった。
固く唇を閉ざしたまま、頷くように足を返した。
これでよかった…。
だけど、安堵するはずの心はなぜか、重たく圧し掛かった。
離れていく背中を目で追う自分。
ヒョン、とかけてしまいそうになった言葉をぐっと堪えた。
離れていくんだと思った瞬間から、寂しいと思うなんて。
ミノは自嘲気味に笑う。
ただ・・・・手放すだけだと思ってたのに――。
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