BOOK1

□鈍感
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ミノ兄と久しぶりにジョンヒョニヒョンの応援にやってきた。

いや、久しぶりって言うのは、ジョンヒョニヒョンの応援にっていう部分じゃなくて、ミノ兄と、久しぶりに、っていう意味で。


他愛もない話をしながら楽屋までやってきて。

ジョンヒョニヒョンの話っていうよりかは、今のサッカーのチームがどうだらとかうんたらって話のほうが多かった気がする。

気がつけば部屋のドアの前についてて、

気持ちを整えるよりも早くミノ兄が扉をあけてた。

ミノ兄はちょっと無神経だ。

不躾じゃなくて、無愛想なんじゃなくて、無頓着。

いい意味でサプライズが苦手。っていうか、たぶんできない。

簡単なノックのあとにすぐに扉を開けてしまう。

まぁもちろんマネージャーも一緒だしカメラマンさんとかも中にいるし、

今日行くとは事前には打ち合わせがあったのだろう。(僕は起き抜けに聞かされてそんなことは知らないけど。)

だから、

最初からそんなに気を遣う必要はなかった、っていうのはわかる。


けど、僕だったらきっと

扉を握る前にはすでに手に汗をかいてるだろうし、

そうっと入って驚かそうかとか、それともサプライズを装って大げさに音を立てて入ろうかとか。

少なくとも一呼吸は置いて考えたりするはずだ。



そういう配慮というか気配りがミノ兄にはない。



けしてそれは悪い意味ではない。

けど、ミノ兄はいつもの自分のペースでガチャッ、とドアを開けて、



ミノ「兄さん!応援に来ましたよ!」


って。

ちょうど今スタイリストさんに髪を弄ばれてびっくりした顔で振り返ったジョンヒョニヒョンにそう言うんだ。




しばしのインタビューや談笑、ステージの上で留意する意見交換なんかを交わした後、最後に記念写真を一枚。



・・・僕の隣で、ジョンヒョニヒョンは、一度もミノヒョンと目を合わさなかった。




ミノ兄だけが他のスタッフさんと打ち合わせをしはじめて僕とふたりだけになったときに訊いてみる。




テミン「・・・なんでミノ兄のこと避けてるの?」


ジョンヒョン「は?」


テミン「一度も目を合わせてない」


ジョンヒョン「・・・それ、どのくらい気づかれてる?」


テミン「・・・え?少なくとも僕は・・・違和感あったけど・・」


ドアを開けた後の態度から、ヒョンはどことなくおかしかった。

いきなり入ってきたミノに腹を立てているのかなと思ったけどそうじゃない。

最初から、機嫌が悪かったみたいだ。


ミノ兄と喧嘩したのかなって思ったけどそうとも取れなくて。


ジョンヒョニヒョンは相変わらずふつーにミノヒョンとも話をするし。


けど、目を合わさない。

忙しいフリして、とか、作業しながら、とか。


それは僕にとって、すくなからず違和感、だった。




ジョンヒョン「あいつは気づいてないでしょ」


テミン「兄さんのこと?」



ジョンヒョンは、別に俺のことなんてどうとも・・・・という言葉を繋げたそうな顔で、テミンを黙って見て、

それからスッと視線を外して奥のミノの方をじっと見つめた。


喧嘩・・・・じゃ、ないんだ。


ただ、ジョンヒョニヒョンだけが、なにか、あって・・

それをまだミノヒョンに伝えられずにいる。


それが何かまでは僕にはまだ経験も知識も不足していてわからないけど。


ミノヒョンの横顔を見つめるジョンヒョニヒョンの顔が、切なくて苦しそうで。


同調してしまいそうになった。


ジョンヒョニヒョンとは時々、そういう波長が合う時がある。


馬が合うというのか、ヒョンと僕は時々似ているところがよくある。







テミン「チャンミニヒョンと2人でスキーしに行ったこと拗ねてるわけじゃないよね?」



ジョンヒョンは力なく笑った。


それが正解のような、正解じゃないような。



・・・なんだぁ。さみしくなっちゃったのか・・・。



僕は合点がいったようにジョンヒョニヒョンと一緒に意中の彼を見つめた。




きっとあの鈍感は、全然気がつかないんだろうなぁ。



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