BOOK1

□セイントセイヤ
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「なぁ、たとえば・・・・オレたちに何にも特技も魔法も使えなかったら、どうする?」


「どうしたの?ないものねだり?チャニョルらしくないね」


「ただ、思っただけだよ。漠然に」


「ねぇチャニョル、輪廻、って言葉、知ってる?」


「りんね?うんや?しらない」


「そっか・・・・。西国に言葉にね、人は死ぬと、何度も何度も生まれ変って、神様になったり、人間になったり、家畜になったりするって・・・そうやって、生きるということを繰り返しているっていう言葉があるんだよ」


「それが、りんね?」


「そう、」


「そしたらオレも、人間だった頃があるのかな?」


「かもしれないね」


「オレが死んだら、人間になれるかな?」


「かもしれないね」




チャニョルは、ぴょん、とバス停のベンチから立ち上がった。



「もういくの?」、とベクヒョン。


「もう行く」、とチャニョル。


チャニョルは、少なくとも、ベクヒョンに話をしたことで、少し気が晴れたみたいだった。

ベンチに腰掛けた時よりもすがすがしい表情になっていることに気がついたベクヒョンが、気を許したように笑った。



「今日は、誰と戦うの?」


「TAO。年下だけど正直、勝てるかわかんないよ」


「負けたら3敗だね」


「なんでオレにプレッシャーをかけるかな・・・」


チャニョルはそう言って苦笑いしながらも、







チャニョルの試合の様子を、ベクヒョンはコロシアムの観客席に座って眺めていた。


今日負ければ、残り3戦。

後がなくなる戦いだった。


今日のチャニョルの相手はTAO。

最年少ながらも、時間調整を掌る彼の前では、いくら炎の量を膨大に使いこなせるチャニョルといえでも、無力に等しかった。



「・・・っ」



「・・・・もしかして、もうちかれたの?」



「・・・・っ、はっ・・」



疲弊するチャニョルとは反対に、タオは先ほどから1ミリも動いていない。


炎の大きさは回を追うごとにその火力を減らしていった。

力の消耗の激しさから言って、おそらく、チャニョルの中ではすでに、永遠とも言えるほどの時間が科せられているのだろう。

開始から、まだ3分しか経っていない。


ベクヒョンはじっと目を凝らす。


凡人には見えない時間調整を何度も仕掛けられ、チャニョルはすでに立っていられない状態にまで追い込まれた。



「・・・・動かない花を落とすのは簡単だ・・」


そう、年下の彼に囁かれたのも束の間。





TAOの一突きで、チャニョルはピクリとも動かなくなった。





ベクヒョンはその光景を見届けてから、そっとコロシアムを離れた。




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