BOOK1

□世界が少しずつ彩を失っていく
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ベッキョナは、そうとう可愛かった。



グループになった12人の中じゃ、風呂に入る順番の時には取り合いになるくらい人気だった。


小柄だし、華奢だし。時々、ドキッとするくらい可愛かった。


そういうところがまた、オレのこころを掻き乱して。


オレはいつもベクヒョンとは一緒の風呂に入らなかった。





部屋に戻って、お互いに違うベッドにダイブすると、決まってベクヒョンから声がかかってくる。


「・・・ねぇ、」


「・・・・んー?」


「今日のレッスン、どうだった?」


「難しかったど、数こなしてくうちにできるようになんだろ」


「そっか、よかった」


「なんで?」


「チャニョルの動きみてて・・踊りにくそうだなって思ってたとこあったから」


「・・・自分の踊りに集中しろよ」


「・・・・そうだね、おやすみ」


「・・・・・・」




レッスン中に感じていた視線は・・・やっぱり勘違いなんかじゃなかったんだ・・・。


ベクヒョンが、いつもオレを見ててくれてるのは知ってた。気づいていたけど・・・・、オレはどうしたらいい。


素直におまえの心に従えないオレは・・・・・、お前になんて答えたらいい。




・・・





そんなことを考えてくうちに、オレはどんどんベッキョンから距離を置くようになっていった。


ベッキョンもベッキョンで、オレのことが一番好きだとか言っているわりには、オレにべたべたしてくるわけでもないし、むしろ、TAOが近づいてきてべたべた触ってくるのは、まんざらでもないような、そんな様子だ。


もしかして、心変わりでもした・・・・?

いや、長年ベクヒョンを見てきたオレからしたら、そんなことないのはすぐにわかる。わかりきってる。


だけど・・・・。





「べっきょ、ん、に、ひょんっ、ごはん、いっしょに、たべよ?」


「いいよ、タオは何が食べたいの?」


「えびの入ったチャーハンだ!」


「はいはい、じゃあ食堂に行こうか」




仲良く並んで歩いていくあの背中を見ると、胸がずん、と重たくなる。


心の中の鉛が、実体を持ったように、心がずーんと沈んでいく。




そんなオレを見ていた、ギョンスが、オレに話しかけてきた。



・・・





「・・・・そうだったんですか・・」



耐え切れずに打ちけると、ギョンスはことのほか驚きもしないで、オレのことばにただただ、うんうん、と頷いて聞いてくれた。



「オレ・・・頭がおかしくなっちゃったのかな?」


「そんなことはないと思いますけど・・・・」


「そうだよね・・」




男として、男を受け入れられないオレの葛藤と、オレが純粋にベクヒョンのことを慕うように好きな気持ちを、ギョンスは一番に理解してくれた。




「ギョンス〜〜いいやつだなおまえ〜〜」


「きもちわるいですね、っ!」


「ww」



抱きつこうとすれば、怪訝な顔をされて。


過剰なスキンシップを取れば猛烈に拒絶される。



D.O.のこの、自然な振る舞いは、オレが悩んできたことを、一気に払拭してくれた。


その上、この潔いような拒絶っぷりは、いっそ清清しくて。


オレをやみつきにさせるくらいの威力があった。



もともとスキンシップが好きだったオレだ。


だけど、ベクヒョンが過剰に反応するもんだから、オレはベッドでごろごろ一緒に横になることも控えたし、お風呂で裸の付き合いをするのも、空港で肩を抱くのもやめた。


オレはたぶん、限界だったんだと思う。


自分が抑制していたすべてものが、ギョンスで満たされるとわかった時。



オレはその思いを全部、ギョンスにあててしまった。




ギョンスは「やめてください、きもちわるいですね〜」ってオレの手を摘み上げながら笑った。



オレはその時、ああ、オレの思いを受け止めてくれるのはギョンスしかいないんだ、って。そう悟った。



・・・




ギョンスとの関係が進行したある日。



先に行こうとするベクヒョンを止めようと腕を掴むと、ベクヒョンに思いっきりその手を叩かれた。




「・・ぅ、えっ?」


「さわらないで」


「・・・・なんだよ、」



ベクヒョンはこっちを見ないで、ぎゅっと唇をかみ締めてる。



久しぶりに触ったベクヒョンの腕は・・前より少し細くなったように見えた。





「D.O.のことが好きなら・・・・そう、言えばいいじゃん」


「・・・・・は、?」



「ボクのことなんて興味がないって・・・」


「だから何言って・・・」



オレの言葉も聞かずに、ベクヒョンは腕を振り払うと、クリスたちのいる方へ歩き出していってしまう。



「なんっ、なんだよ・・っ」



風に飛ばされそうになった帽子を押さえ、オレは眉間にしわを寄せたままベクヒョンの背中を追った。


ベクヒョンはクリスたちの輪に入ると、いつものようにLAYやTAOに囲まれて、楽しそうに談笑していた。

TAOの腕に腰を抱かれ、クリスに頭を撫でられてるベクヒョン。



じりじりと鉛が熱を持つようにに、チャニョルの心が焦げ付いてくる。


そのうち穴でも開いて、オレは死ぬんじゃないかって。


奥歯を噛み締めながらベクヒョンの背中を見つめてそんなことを思った。




「どうしたんですか、チャニョル?」


「・・・・なぁ、D.O.・・・オレはおまえが心の支えだよ」


「僕、男は嫌いです」




永遠にそう言い聞かせてくれオレに。





でないと、本当に―――。









【世界が少しずつ彩を失っていく】


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