BOOK1
□掌
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目が覚めたミノが部屋を出ると、keyが水滴のついた頭をタオルで乾かしながら廊下に出てきた。
「ごめん、シャワー浴びてたんだ。起こしちゃった?」
「いや。丁度目が覚めたとこ」
「そう」
keyはスッとミノの横を通りすぎてく。
「あのさ、ジョンヒョニヒョンは?」
「・・・?部屋で、寝てると思うけど?」
目の前の部屋のドアを指して、keyはそういうとリビングの方へ向かってった。
ミノはドアの前で立ち止まり、そろりとドアノブをまわす。
ギィ、と音を立てて、扉が開いた。
中は真っ暗だ。
「ヒョン、起きてる?」
返事はない。
ミノは静かに部屋の中に足を踏み入れる。
物を踏んだり転んだりしないように、そうっと入っていった。
ベッドの前まで辿り着くと、ギシリとスプリングを鳴らす。端の方に腰掛けたのだ。
「ヒョン、起きてるんでしょ?」
「・・・」
「泣いてたの?」
「・・・」
「好きだから・・・泣いてくれたんですよね?」
「・・・」
ミノが話す間、ジョンヒョンは一言も喋らなかった。
そうして静かな部屋の中の空気に、少しだけ入り口から風が入った。
「っミノ・・ちょっと、いい?」
キボムが顔を出した。
ミノは顔を扉の方に向けて、スプリングを軋ませた。
立ち上がろうとした瞬間、自分のてのひらを布団の中に突っ込み、ジョンヒョンの手を見つけると、ぎゅっと握った。
手の温かさを確認すると、ミノはスッとその場を離れてkeyの方へ。
扉はパタンと閉まり、
暗がりの中、ジョンヒョンは動くことも出来ずにただ
握られたてのひらを掴むように拳にした。
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