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□愛ノ言葉
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俺でよければ、
いくらでも貴方に抱かれます。

本城さんの代わりでもいい、繰り返し繰り返し‥何度もそう自分に言い聞かせた。




「‥‥やめた」

「えっ、軍司さん?」

「気持ちよくて泣いてる涙じゃねーからな‥」

「‥‥‥っ!!」


そう言って軍司さんは、俺の涙を指で優しく掬った。

気付くと、本城さんへの嫉妬で頭がいっぱいだった俺の自身はくったりと萎えていた。

確かにこんな状態じゃあ‥。

ゴロンと横に寝転んだ軍司さんは、俺の首の隙間に腕を入れてきて腕枕をしてきた。


「十希夫‥こっち向けよ」

「‥はい」

まだ涙も乾かない俺の顔はグシャグシャで、情けない顔になっていた。

くるっと軍司さんの方を向いて、首に顔を埋めるとギュッと優しく抱きしめてくれた。

頭を撫でられ、おでこにキスを落とされる。


「‥十希夫、好きだ。いつだってな‥お前の事で頭がいっぱいなんだぜ」


ー嘘だ。


「お前に告白する時もな‥本当はフラれるのが怖くてなあ‥一ヶ月も悩んだんだぞ」


ー信じない。


「いつの間にこんなに好きになっちまったんだろうな‥十希夫‥」

ー俺だって‥


「何で泣いてるか‥知りてえとこだけど、言いたくない理由があるならこれ以上は追求しねえから‥」


ーやだ、優しくしないで。


「ただな‥お前の淋しそうな涙は、ちょっと辛いな。俺は、お前を救えないのかな‥って悩んじまうよ‥」



「軍司さん‥」

「ん?」

「ごめんなさい‥俺‥想ってる事‥話します」


そう言うと、口角をあげた軍司さんが「お前の言うことなら何でも受け止めてやる!」と笑った。


「ほ‥本城さんに‥‥嫉妬して‥勝手に暴走して‥辛くなって‥」

「え‥本城さんに?何で?」

「だって、軍司さん‥本城さんの話しかしないから。本当は本城さんを好きで、想いが伝わらないから俺を代わりにしているんじゃないかと‥」

「‥ん?俺が本城さんの代わりにお前を抱いていたと思ったのか?」

「‥‥はい」


クスクスと笑い、困った表情を浮かべた軍司さんが俺に謝罪をしてきた。

「ごめんな‥十希夫。あの人への憧れが強くてついつい、熱く語ってしまっていたようだ。本当に悪かったな‥ごめんな‥」

「じゃあ‥本城さんに対する恋愛感情は‥?」

「はははっ!そんな、恐れ多くて無理だよ!」

「‥‥ごめんなさい。俺、勝手に暴走して‥本城さんの代わりでもいいならずっと軍司さんの側にいられるって‥思って‥」

ヨシヨシ、と頭を撫でて優しく微笑む軍司さん。


貴方のその笑顔がなにより大好きなんです。


「‥俺はな、十希夫が一番いいんだ!十希夫の代わりは誰もいない。わかるな?」

「はい‥」

「十希夫‥‥‥愛してる」

「は‥はい」


ジッと俺を見据えて、甘く視線を送れられれば目が合って恥ずかしくなる。

俺は、恥ずかしい愛の言葉を言うタイプじゃないから返事をするのが精一杯で‥でも耳まで真っ赤なこの顔をみたらきっと、軍司さんは解ってくれるんだろう。



以来、軍司さんは以前に比べて本城さんの話題を殆ど話さなくなった。
俺への気遣いだろう。

こんなに愛されてるのに。


また土曜日が来る。

そうしたら、この前出来なかった分‥たくさんたくさん軍司さんに甘えて今以上、離したくない位に愛の言葉を囁いちゃおうかな。

‥なんて言える訳もないけど。

軍司さんの目に映るのは紛れもなく俺だけで‥俺の目にも軍司さんしか映らない。

だから、

せめて貴方が寝てる間に精一杯の愛の言葉を言おうと思う。



「軍司さん、愛してます」と。


end
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