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□Happy Road
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『Happy Road 』
今日は前川と仕事の休みが被り、俺は前川へ会いに行く為に久しぶりに安生へと向かっていた。
前川の住む団地に着いて、部屋へ向かうと近くの公園からなにやら騒がしい声が聞こえてきた。
「アキラちゃーん!こっち!こっちー!!」
げっ‥!
なんだあれは。
見ると、前川の肩に肩車をされている3歳位の女の子がいた。
「宗くーん、あのおじさんだれー?」
おじっ‥
俺はまだ10代だぞ‥!
ちっ、これだからガキは苦手なんだ‥。
「あの人はねー、俺の恋人だよー」
「恋人って?お嫁さん?」
「うん、そうだよー」
おいおい‥
当の本人無視して、ガキと勝手に話を進めるなよ。
しかも、お嫁さんって‥まぁ悪い気はしねぇけどよ。
「前川、そのガキなんなんだよ‥」
「ああ、おむかえの子なんだよ。時々、預かって面倒みてるんだ。」
「ふーん‥」
ちっ、今日は久しぶりに二人でのんびり過ごせると思ってたのによ‥ガキの子守りかよ‥。
「宗くーん、あのおじさんと遊ぶー!」
おっ‥
だから!
おじさんじゃねえって‥!!
このクソガキがぁあ‥!
どうやら俺の顔に不機嫌な表情が出ていたらしく、前川が近付いてきた。
「アキラちゃん、子供なんだから許してやってよ。ヒゲが生えてるからそう見えるだけなんだよ。」
と、
前川は肩車をしていた女の子をヒョイと地面に降ろした。
「あぁ‥ヒゲか‥そりゃまあ仕方ねえか‥」
てってって‥と女の子が近寄ってくる。
「ね、おじさん、お名前は?」
「おっ‥‥アキラ」
「アキラちゃん!」
ぐっ‥!
またいきなり「アキラちゃん」呼びかよ!!
なんなんだよ、この前川に似たガキは‥!!
まさか前川、てめぇのガキじゃねえだろうな‥!
なんて考えてたら、
ガキがいきなり俺の太股に抱き着いてきた。
「アキラちゃーん、抱っこぉ‥!!」
「‥‥ちっ‥し、仕方ねえな‥」
行動まで前川そっくりだな、なんて‥思わず赤面してしまった。
そんな前川はベンチに座り、微笑ましく俺のことを眺めていた。
ヒョイと女の子を抱え上げた。
うわ‥軽っ‥!!
すると、
「アキラちゃーん、おひげがジョリジョリー♪」
そう言って、ヒゲの生えた部分に顔を押し当ててきた。
なっ‥
前川の子供版かよ!と心の中で思わず突っ込みをいれる。
やることなすこと、前川と行動が同じ‥。
そういや、この前もベッドの中で「アキラちゃんのおひげ‥ジョリジョリー♪」ってあいつにされたっけ。
「アキラちゃんのおひげ、気持ちいいねっ!」
ベンチに座っている前川の大笑いした声が聞こえる。
してやられた感‥。
でも‥いきなりここまで懐かれたら、悪い気はしねえな‥。
いつも他のガキには怖がられてたしな。
「お前‥名前は?」
「んとね、ともちゃん!」
「そうか‥ともだな!」
「ねー、アキラちゃん砂場で遊ぼー!」
おいおい‥。
前川ならともかく、俺に公園遊びしろってか!
俺はこれでも武装のメンバーなんだぜ‥こんな事‥出来るわけ‥
あ、砂場。
懐かしい。
「はい、アキラちゃん!召し上がれ!!」
「なんだよこれ‥」
砂を水に浸して丸めた、いかにも懐かしいその形‥。
泥ダンゴだ。
「ねー、アキラちゃん早く食べてよー!」
‥食えるかっ!!
ちらっと前川に助けを求めるが相変わらずベンチに座り、頬杖をついて俺達をニヤニヤ見ているだけだった。
仕方なく泥ダンゴを食べるふりをして、ままごとのような遊びに付き合う。
いきなりぐいっと俺の手を引っ張り、
「次はブランコー!」と連れ回される。
なんなんだよ‥一体。
「おいっ、前川‥てめぇも見てないで一緒に遊べよ!」
「あははは!ゴメン!‥アキラちゃんと俺が夫婦で、家庭を持ったらこんな感じかなぁ‥って、妄想してたわ♪」
ふっ‥夫婦って。
じゃあ‥‥このガキ‥が俺達の子供‥?
急に気恥ずかしい気持ちになり、「とも、行くぞ!」と手を取ってブランコに向かった。
クスクスと笑う前川の声が聞こえたが、確かに俺と前川の子供だと想像したてみたら‥急に苦手だった子供も可愛くみえた。
どうみても楽しく遊ぶ幸せな家族の図。だよな‥
なんて、
ブランコや滑り台で遊んでやってたら‥急にさっきまで楽しそうに遊んでたともがぐずりだした。
前川が走ってくる。
「ああ‥アキラちゃん大丈夫。眠いだけだから‥ほら、ともちゃんおいで。」
と、
ともをおんぶして前川の自宅へと戻った。
「あいつ、寝たか‥?」
「うん」
「は〜!!全く‥疲れたぜ‥」
ようやく今日、最初のタバコに火を点ける。