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□レッド・メガホン
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九里虎と二人で街へ買い物に出かけた。
『レッドメガホン』
「クロサー‥気付いとるん?」
「ん?なにが?」
「さっきからおなごば、擦れ違う度にクロサーを見とうよ、クロサー何気にモテるけんね‥」
「気のせいだろ」
「クロサーは自分の格好よさに全く気付いとらん‥!ま、ワシの前ではヒィヒィ可愛く鳴いとうけんね♪」
「‥死ねっ!」
そう言って九里虎の背中に一発、蹴りを食らわした。
格好いい?
モテる?
は?
お前だろうが。
高校に上がる前は確かに女もいたけど、今は興味ねえし。
たまに駅で女子高生に声をかけられたりもするけれど、そういうのも苦手だし。
本当、女にマメなお前をある意味尊敬してならねえよ。
二人で店に入り、店内をウロウロしてるとー
「あーっ!グリグリ〜!!!」
「おおっ‥エリコー!こんな所で何しとうよ!」
「買い物ー♪グリグリは?」
「ワシもたーい♪」
‥はっ、めでたいやつ。
思いっきりキャラ作ってんじゃねえかよ、あほ九里虎。
「キャア!ちょっと‥グリグリの友達?めちゃくちゃ格好いいーっ!」
「ん?ああっ‥クロサーか!そうね、クロサーはイケメンたいねー♪ワシの次になぁ!ははははは!!」
「やだー、グリグリってば♪ね、ね、紹介してよー!」
‥は?紹介?
冗談じゃねえよ!
なんで俺が九里虎の女と挨拶しなきゃならねぇんだよ!
「クロサー、こっちくるばい!」肩をグイッと掴まれて引き寄せられた。
「初めまして!エリコでーす♪」
「‥黒澤です、初めまして。」
「黒澤くん?本当に格好いいわねー!モテるでしょう?彼女はいるの?」
「いえ‥いません‥」
「エリコ、クロサーはワシの恋人ばい!彼女はおらんとよ!はははは!」
バッ‥バカ!
彼女の前でそれ言うか!
俺ぁ、どうなっても知らねえぞ‥!
「ぷっ、グリグリってばーまたそんな面白いこと言ってぇ♪」
あ、そうきた?
そうか‥確かに‥冗談にしか聞こえないよな‥。
俺と九里虎が恋人同士なんて。
*******
九里虎の彼女と別れ、買い物もそこそこに街を後にした。
「クロサー‥何を怒っとうよ?」
「別に怒ってねえよ」
何が悲しくて、お前の彼女に俺が紹介されなきゃいけないんだよ。
しかも、あっさり恋人発言しやがって!
そりゃあ向こうに取っちゃあ冗談にしか聞こえねえだろうけど、
俺は‥
俺達は‥
恋人同士‥なんだ‥よな?
「九里虎、なんであんなこと言った?」
「ん?」
「なんで、俺を恋人って紹介したんだよ!向こうが冗談で切り替えしたからよかったけどなぁっ‥もし本気にしてたら、修羅場だぞっ‥!」
「そげんこつなったら、答えは簡単ばい」
「えっ‥?」
「もちろん、クロサーをとるばい!」
「‥‥っ。」
「エリコはのう‥クロサーに目をつけとるばい。エリコのあの目は、獲物を狙ってる女豹の目だけんね‥恐らく近いうち‥またクロサーに会わせろとか言うてくるばい。」
「はぁああっ‥?」
「だから、先手を打って恋人発言しとうよ!クロサーをとられんようにのう。はっはっはっ!!」
ったく‥このバカが。
恥ずかしさと嬉しさで、照れ隠しの代わりに再び九里虎の背中に蹴りを食らわしてやった。
「痛っ‥何すんね!!クロサー!今夜もヒィヒィ言わせちょるばい‥!」
「ふっ、いいぜ!」
まさかの返答に、
目を真ん丸くさせた九里虎が硬直してる間に俺は猛ダッシュで、九里虎の前から逃げ出した。
「はっ‥!まっ‥待てクロサー!!今の返事信じとるけんねー!!!」
久しぶりに思い切り笑いながら走ってやった。
全速力で。
あいつに捕まらないように。
捕まったら、
何をされるのかな‥
‥それはそれで期待したい。
end