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□キスは麻薬
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*性的表現が有ります。
こともあろうか。
俺の「初めて」の相手は男だった。
相手の名前は、前川宗春。
安生市、EMODの頭。
なんの因果か好意を持たれて、気付いたら俺もあいつに溺れていた。
全く恋愛経験が皆無に近い俺は、どうあいつに接していいのか解らずにいた。
あいつは俺にいつも優しい。
俺の欲しい言葉、
俺の感じる場所、
俺の言いたいこと、
何も言わなくても全て解ってくれた。
『キスは麻薬』
今日はお互い特に何も予定がなく、俺は留守で誰もいないという前川の家へと向かった。
「アキラちゃん、いらっしゃーい!」
「お、おうっ‥」
やっぱり付き合ってからは、つい前川を意識しちまって‥照れ臭くてこういうのは慣れねーなぁ‥。
「ねー、アキラちゃん今日は泊まっていくんでしょ?」
「ぶっ‥!!」
来て早々の前川の爆弾発言。
あいつはハナからそのつもりだったらしい。
「俺はっ‥ただお前んちに遊びにきただけであって‥!泊まるとは一言も言ってねーぞ!?」
「あれー?そうだったっけ?でもいーじゃん♪今日、誰もいないし!泊まっててよ!俺、アキラちゃんがいないと眠れない‥!!」
「‥ったく、ガタイのいい大男がだだこねてんじゃねぇよ、全く‥」
そんな口調とは裏腹に、泊まる気持ち満々だった。
********
夜になり、前川が作った料理がテーブルに並ぶ。
「うめぇ‥!お前、天才だな!!」
「でしょ?でしょ?俺と結婚すれば、毎日美味しいご飯、食べられるよ!!」
「ぶっ‥けっ‥結婚て、お前なぁ‥!」
「だって、俺達付き合ってんだもーん!次は結婚しかないっしょ!」
付き合ってると言っても‥まだキス止まりだし。
ん?
今日、俺‥泊まるんだよな‥。
まさか‥!!
恋人がお泊りするって事は、そういうことだ。と今更になって気付く俺ー
いきなり上がる心拍数。
食事を一気にかきこみ、「落ち着け!」と言い聞かせる。
大丈夫、あいつは優しいから何もしてこない‥はず。
いや、でも何もしてこないのもちょっと不安っていうか‥。
「アキラちゃん?なに、困った顔してんの?食事、おいしくなかった?」
「へっ‥!いやっ‥めちゃくちゃ美味かったよ!本当、お前は天才っ!はっはっはっー!!」
前川はクスッと笑って、食器を片付け始めた。
「アキラちゃん、先に風呂入りなよ」
「へっ‥風呂?」
「大丈夫、覗いたりしないから♪」
そう言われるともっともっと意識してしまうだろが‥!!
ぶつぶつと文句を言いながら風呂に入り、いつもより念入りに全身を洗った。
(期待してんのは俺のほうかよ‥!)
風呂を出て、
若干のぼせ気味の俺の前には冷たい黒烏龍茶が差し出された。
「アキラちゃん、これ好きだよね?」
「前川‥ああ‥ありがとう‥」
熱い体に染み渡る。
前川は本当に俺にはもったいない位だ。
気がきくし、優しいし、料理はうまいし、喧嘩も強い。
そんな前川に、俺は今から抱かれ‥。
はっ‥!!
なに考えてんだ俺はー!
「じゃあ俺も風呂行ってくるから、アキラちゃんは適当にくつろいでてよ」
「お、おう」
前川が風呂に行ってる間、いろんな事を考えていた。
俺は黙って寝てりゃあいいのか?
声とか出してしまうものなのか?
服はいつ脱ぐんだ?
下着は自分で脱ぐものなのか?
やっぱり前川の事は、宗春って呼ぶべきなのか?
頭を抱えて"初めて"に備える段取りを必死に妄想していた。
「アキラちゃん、どうしたの?具合悪いの?」
頭を抱えてうずくまる俺を気遣う前川。
「いや‥なんでもない、なんでも‥」
前川はなにもかもお見通しのような微笑みを浮かべて、ソファに座る俺に寄り添ってきた。