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□touchoflove
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『touchoflove』


「俺もバイクの免許欲しい…」

俺はぽつりと呟いた
武装に入り、仲間が乗るバイクに憧れて貯金なんてあるわけもないのについ口から出てしまった

「甲斐なら取れるよ、俺でも取れた位だし」

柳は謙虚にそう答えた

「そうかな…」

「俺が教えてやるよ、乗り方とか…」

なんだか変な感じだった
幼馴染みがどんどん先に行ってしまう、そんな気がして焦っていた
そんなもやもやした気持ちが顔に出ていたのか柳が気を利かせてツーリングに誘ってくれた

「乗れよ、どっか行きたい場所あるか?」

「…無難に海とか?」

「ははっ、だな」

いつの間にこんなに柳の背中は大きくなったのだろう
バイクの後ろに跨がり柳の背中をじっと見つめる
昔は俺より小さかったのに…立派になりやがって

俺を置いていかないでくれよ…

もやもやした気持ちがまた強くなって柳の背中に頭を乗せた
どの位走ってきたのだろう
やがて潮風の匂いが鼻をつく

「すげ…綺麗…」

久しぶりに見る海は限りなく広く青い
バイクを停めてシートから降りる

「甲斐、お疲れさん!大丈夫だったか?」

「ああ…綺麗だな…海…」

「なんか飲み物買ってくるよ」

「悪いな…」

俺は砂浜に腰をおろして暫く海を眺めていた
柳がなかなか戻ってこない
かれこれ10分は過ぎていた
あまりにも遅い事に不安になり、俺はその場を立ち去り柳を探した

「…いた!、ん?」

柳は自販機の前では複数の女の子に囲まれていた
どうやら逆ナンされたようで、優しい柳の事だからうまく逃げられないでいたのだろう

「バイクチームの副頭なんてすごいですね♪」

きゃっきゃっとはしゃぐ女の子はどさくさに紛れて柳に触れた

柳が好きなのは俺…、女なんかには興味ないんだよ…

「柳…!飲み物、おっせーよ!!」

「か、甲斐…!」

俺はそう言い放ち、スタスタと海へと戻る
柳が走って追いかけてきた

「悪い…なんか声かけられちゃってよ…抜けられなくて…」

「いいよ、もう…」

「甲斐…怒ってるのか」

「別に、」

ふて腐れて海の近くに腰をおろして無言を貫く
あー俺って嫌な奴…

「ほら、甲斐…コーラだったよな?」

「あ…うん…」

プシュッ…コーラを開けると勢いよく飛び出る泡

「つめてぇ…!!や、柳…おまっ…コーラ振っただろ?」

「あ、悪い…さっき走ってくるときに…」

「…つうか!お前も泡まみれじゃねーか!!」

「ぷっ、はは…だな!つめてえ…」

勢いよく飛び出たコーラが俺達に降りかかった
半分まで減ってしまったコーラを一気飲みして二人、コーラまみれになったまま海を眺めていた

「甲斐…本当ごめんな…コーラ」

「いいよ…」

「甲斐を喜ばせたいって思って何だか空回りばかりだな…」

「や、柳…」

「俺は…お前にはずっと笑っていてほしいんだ…ずっと俺のとなりで」

柳の熱い視線が俺の瞳に映る
柳は静かに近付いて耳に触れるだけのキスをした

満足げに柳は笑っていた

「やっと甲斐にキスできた」

「…続き、」

「ん?」

「続きは…やんねーの?」

「ばか…俺が止まらなくなるの解ってて言ってんのか」

「うん、わざと」

俺はニッと笑って柳に寄り添った

「来てよかったよ…海、」

「だな、」

「あ、あとバイクの免許取るの…先伸ばしにする」

「なんで?」

「………内緒」


柳の背中をもう少し見ていたいから、なんて言えない。


end

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