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□恋するギョーザ
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ツイリク★蒼幽さんへ

鮫ゲン



「恋するギョーザ」



四代目武装が終わり、
俺は鮫と築30年のボロアパートを借りて二人で住むことにした。

…と、言うか
まあ…鮫が独り暮らしをする為に借りたアパートに俺が押しかけた、っていう言い方が正しいのか。

そんなこんなで、鮫は朝から晩まで仕事に励み…俺もバイトをかけもちしながら細々と甘い生活を送っていた。


「はい!鮫、弁当…!!」

「おう…」

「今日の晩ごはん何がいい?」

「ん…?んー…」


家事は主に押しかけてきた俺の担当。
正直、家事は得意じゃなかった


「んー…餃子…?かな…」

「餃子…!ヨシッ、任せろ…!!」

「ふっ…」

「あー!鮫…!!今、笑ったろ…!?お、俺だってな…餃子くらい作れるわ…!」

「期待してるよ…じゃあ行ってくる」


クスクスとバカにしたように笑って、鮫は仕事へと出かけた。

バイトが休みだった俺は、スーパーへ行き餃子の材料を買い揃え帰宅した。


「くっそ…鮫のやつ〜!!今に見てろよ!」


思いの外、慣れない餃子作りは大変だった。

皮から具ははみ出るし、
見かけも不格好…。


「ん…でも見かけより、味だよな…」

鮫の好きなキムチを入れてみたり、ピーナッツを入れてみたり四苦八苦しながらもなんとか晩ごはんの餃子は完成した。


そろそろ鮫が帰ってくる時間。


「ただいま」

「鮫…!おかえりー!」

「先に風呂入っちゃって!俺、その間に餃子焼いちまうからさ…♪」

「マッ…マジで餃子作ったのか…?お前が?」

「ああ…!」


鮫はまたクスクスと笑いながら風呂場へと向かった

なんだよ…バカにして…

俺は餃子に火を入れて、焼き上がるのを暫し待った。



「…ん?」

何だか焦げくせえ…。

フライパンの蓋を開けると、焦げくさい匂いと煙り。
慌ててフライ返しで返すと真っ黒に焦げた餃子が完成していた。


「うぇえ…!なんで……」


風呂場から鮫が出てくる音がした。

「やべえ…やべえよ……」

「ふー…あちぃー…、ゲン…晩めし……ゲン?」

「あっ、あのさ…!!たまには外でめし食わねえ?」

「……ん?餃子は?」

「あ…っ、あの………」


鮫は冷蔵庫から缶ビールを取り出して、テーブルの前に座った


「ゲン…?どうした…?食わねえのか…?」

「鮫…、ごめん……」


鮫はグラスにビールを注ぎ、
俺をジッ…と見つめる


「ゲン…ビールには焦げた餃子がつきものだろう?」

「……さ、鮫!?」

「ほら、早く…ビールがぬるくなっちまう…。俺は焦げた餃子が早く食いてえんだよ…」

「や…確かに焦げてっけど…真っ黒で…本当…食えたもんじゃない…かも…」

「んなもん…!食ってみなきゃわかんねーだろ!食えるか食えねーかは食ってみてから決めるわ…!あほっ」

鮫はニヤリと笑って、
早く、早くと俺を急かした。

俺は真っ黒に焦げた餃子を皿に乗せて、テーブルに置いた。


「いただきます…」

真っ黒なうえに不格好な餃子を鮫が口へと運ぶ。


「…不味いだろ?鮫…ごめん……」

「ん?キムチ入ってるな?」

「あ、ああ!鮫、キムチ好きだから…」

「ん…こっちはピーナッツか…」

「う、うん!」

餃子を食べて、ビールを流し込み、いつもみたいにテレビを見ながら変わらない鮫。


「ゲンは食わねえのか…?」

「俺は…」

「俺、焦げた餃子好きなんだよな…」

「…さ、」

「キムチ餃子もピーナッツ餃子もサプライズか?なかなかやるな…ゲン!」


鮫は真っ黒に焦げた不格好な餃子をペロリと完食した。

その後で、何も食べてない俺に鮫は余っていたキムチで炒飯を作ってくれた

俺は泣いていた
嬉しくて
情けなくて

鮫の優しさが痛くて
鮫が大好きで堪らなくて…


「…泣きながら炒飯食ってるやつ…初めて見たぜ…」


鮫はボソッと呟いた

「鮫が好きだから…!泣いてんの…!!チクショウ…うめえ!!」

鮫はまたクスクスと笑って、
そっと俺の髪を撫でた。


「なあ…ゲン、また餃子…作ってくれよな?」

「…ん、」


「俺がジジイになるまでには…まあ、上手く焼けるようになるだろ…」


それは最高の言葉。
俺と鮫が末長く続く為の…



end

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