request

□誕生日には甘い言葉を
1ページ/1ページ

愛華さんへ

自分の誕生日に無頓着な明ちゃんの誕生日に張り切る宗春のお話。
リクエストありがとうございました♪






『誕生日には甘い言葉を』



「明日、アキラちゃんの誕生日だね♪」

「あ?ああ…」

「ね、何が欲しい?」

「別に…何もいらねーよ…」



明日は明の誕生日
俺はこの日の為にいろんな計画を練っていた

プレゼントは実は購入済み
明が欲しがっていたシャツと、個人的に付けて欲しくて買ったペアリング

夜はちょっと奮発してお洒落なレストランを予約した




「ね、アキラちゃん…明日の夜は予定空けておいてよね?」

「なんで?」

「なんで…って、アキラちゃんの誕生日だから!」

「はー…別に誕生日だからって…いいのによ…」



誕生日やクリスマスに無頓着な明となんとか過ごしたい一心でしかなかった

女の子なら万歳して喜ぶのになぁ…

明と付き合ってから半年が過ぎて、俺は明が喜ぶ為ならなんだってすると…そう決めていた



********


深夜0時をまわり、明の誕生日になった瞬間にメールを送った。



ーHAPPYBirthday…!

返事がないのはいつものことだ。
きっと寝ているのだろう





そして、
その日の夕方になっても明からの返事はなかった…

レストランの予約時間が迫り、俺は明に電話をかけた。





「ー♪ー♪…もしもし?」

「アッ、アキラちゃん…!よかったぁ…返事がないから心配してたんだよ〜!」

「あ、悪りぃ…サンキュな」

「これから迎えに行くけど、準備はいいかな?」

「あ?迎えに??」

「うん…誕生日の夜は空けておいてよ…って、昨日言ったよね…?」

「…………悪りぃ、」



明は少し沈黙したのちに謝罪。

確かに電話口の明の周りはガヤガヤと賑かで、明は一人じゃないとすぐに悟った…


「…だ、誰かといるの?」

「あー……、うん…将五…、えと…武装の連中がさ……」

「…………、そっかなんだか周り賑かだもんね?」

「あぁ…今、金のバイト先の居酒屋でさ……」

「……わかった…、楽しんでね…アキラちゃん」

「ああ、悪いな」

「いいって!じゃあね…」





電話を切って、
溜め息をひとつ。

落ち着く術はたった一本の煙草


紫煙を空に吐いて、
渡すはずだったプレゼントの包みを思わず睨み付ける

明が悪いのではない

舞い上がっていた自分が悪いのだ

「……やっぱ、仲間は大事だよな…」


再び、携帯を取り出した


「あ、もしもし…ディナーを予約していた前川です。すみません…急用で行けなくなりまして…、はい…すみません…」


レストランをキャンセルし、
ちょっとお洒落をしていた自分の姿がなんだか滑稽に思えて…よからぬ事まで考えてしまった


「女友達……、」

淋しさと虚しさをまぎらわすにはうってつけだ

しかし、
明を悲しませることなど…出来やしなかった



「仕方ねえ…一人でドライブでもすっかな………」


車を一時間走らせて、
海の見える街まできた

再び、煙草に火を点けて大きく肺に流し込む



「アキラちゃん…誕生日、おめでと……」


波音があまりに耳障りに思えて、思わず小さい声で静かに囁く



一人、静かに



ー♪ー♪ー♪


「……!アキラちゃん?」


明専用の着信音が鳴り響く


「もしもし?」

「…はあっ、はあっ…まえかわ……おまっ、いま…どこにいやがるんだ…っ…!?」

「え…えと…海?」

「はぁああ!バカかっ…!折角、人が…居酒屋なんとか…抜け出してきたのによ……なんでいねーんだよ…!」

「えっ、抜け出して…って?アキラちゃん…?」

「約束…守れねーようじゃあ男やってる意味ねーだろうが…!!早く帰ってこい…!アホっ…!」



明が居酒屋を抜け出し、走ってうちまで来てくれた姿が目に浮かんだ


「待ってて!すぐに帰るから…!」

「おう!おまえんちの近くの公園にいるわ…!気を付けてこいよ」




そこからは無我夢中で車を走らせた

会いたい
会いたい

早く明に会いたい…

明も同じ気持ちでいてくれるかな


やがて、
車を飛ばして30分で到着し、
急いで明の待つ公園へと向かった

プレゼントを抱えて



時間は
深夜0時を回ろうとしていた


「アキラちゃん…!!」

「…おせーよ、あほ」

「アキラちゃん…誕生日、おめでと…?」

「ふっ、サンキュ」



俺はそのまま明をきつく、きつく抱き締めた

明もまた、俺の背中に手を伸ばして受け入れた




「…前川、悪かったな」

「いいんだよ…もう、アキラちゃんに会えただけで嬉しい…」

「色々考えてくれてたんだろ……飯食いに行くとか…」

「いいんだってば……」

「ありがとな…前川…」

「来年も、再来年もずっと一緒だから…アキラちゃんの誕生日は…」



そう言って、
俺はプレゼントを手渡した

明は恥ずかしそうに、
でも嬉しそうに受け取って「サンキュ」とだけ言った





「前川…、今からでもお祝いしてくれるか?」

「喜んで♪」

「腹減ったから…飯、奢ってくれ…!」

「ふふっ!喜んで♪」

「あー…駅前のラーメン屋な?あそこなら朝までやってっから!」

「オッケー」




ふたり車に乗り込んだ、

明の言う駅前のラーメン屋までは車で一時間の場所。

俺は、車を走らせながら車内で明に甘い言葉を囁き続けた。



end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ