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□消せない傷跡
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あぶさんへ

拓海×将五。
どちらかというと拓海→将五テイストになってしまいました。すみません〜!
将五に気持ちを伝えたいのに、なかなか伝わらない拓海の想いと葛藤を中学から武装に入るまでを作品にしてみました。
リクエストありがとうございました♪






『消せない傷跡』




将五が幼い頃によく言っていた




「おっきくなったら、たくみとけっこんする!」

「しょうご、おとこどうしはけっこんできないんだよ」

「たくみといっしょじゃなきゃいやだ…!」

「じゃあけっこんする?」

「うん…!たくみとけっこんする!!」





ねえ…将五は覚えてる?

俺は片時も忘れたことなど、なかったよ?



あれから14年…、
俺はまだ将五の傍にいる




「ん?どうした拓海…?ボーッとして…」

「いや、ちょっと…昔のことを思い出してた」

「昔のこと?」

「ん…たいしたことじゃないよ…」




小学校高学年になり、
将五はリトルリーグに入り、少しずつ俺との間に距離が生まれた。

それでも俺は将五から離れることはなかった。
野球の試合も見に行ったし、休みの日には泊まりに行ったりもした。



怪我でリトルリーグを辞めて、塞ぎこむ将五の傍にいるのは自分だと思っていた。

これで将五がいつも傍にいてくれる…

怪我で落ち込む将五を見ては慰めや励ましの言葉をかけた

将五は無理に笑って「ありがとうな」とだけ言った





それから、将五が進んだ道は「武装戦線」という兄と同じ道だった


********


「…え?将五…高校行かないの?」

「ああー…うん、もう野球も出来ないんじゃな…行っても意味ねえし…」

「一緒に通おう…って言ってたじゃない?」

「…悪い、拓海……俺、兄貴と同じ道に進むって決めたから」



将五は喧嘩に明け暮れた。


天地と壮絶な喧嘩をした時に、将五の顔に一生消えない傷がついた


「将五…痛い?」

「少しな…」

「将五の綺麗な顔に傷がついちゃったね…」

「ふっ、ばか…なんだよそれ…どうってことねーよ…!」

「傷…触っていい?」

「ん?ああ…」



両手で将五の頬を包んで、昔から見てきたその大好きな顔に思わず息を飲む


…キスがしたい、と。




「拓海…?」

「あっ…、一生残るの?傷…」

「医者の話だとな…」

「……俺が、」

「ん?」


"俺が将五の面倒を一生みるよ"



そう言いたかった。

何の保証も確証もないままそんな責任のある言葉を言えるはずがない


「あ…いや、なんでもないよ…」


ただ、
将五の頬を包んで苦笑いを浮かべるしかなかった


それから…
中学を卒業し、俺達は滅多に会うこともなくなった



「たくみとけっこんする…か、」

ふと幼い将五の言葉を思い出しては苦笑した

今の将五には俺はもう必要ない?

武装に一緒に入らないか…とも誘われたが断った。

俺より武装を優先した将五への当て付けでしかなかった…






本当は一緒にいたいのに、
本当は入ってもいいといいたいのに…


将五を傍で支えてあげたいのに


顔に残る傷跡を見るたびに胸が締め付けられた

好きだよ、将五
好きだよ、




程なくして
俺は武装入りを決意した。

将五が変わる様を近くで見ていたい、
支えてあげたい…

必ず、守る




「ようやく…だな、拓海…!待ってたぜ…」

「待たせたな…」

「頼むな…色々と、」

「うん………、ねえ将五?」

「ん?」

「傷…触っていい?」

「えっ…」

「駄目ならいいんだ…」

「…いいよ」



久しぶりに将五に触れる感触

あの頃より逞しくなった身体


「おい…拓海…あんまり見るなよ…なんか…恥ずかしいだろ…」

「どうして?」

「あ…いや…顔…近ぇし……、」

「将五……俺はいつでも傍にいるから」



俺は将五の傷跡を指でなぞり、静かに離れた。

滅茶苦茶にしてやりたい欲望、
好きと言いたいのに言えない葛藤、
頬に触れるのが精一杯な俺の想い…



ただ、傍にいる。


前を歩く将五の背中に呟いた



「将五…好きだよ」



少し離れて歩く将五は、
右手をひらりと上げた。


それが将五の答え。

きっと、
忘れてなんかいなかった
あの頃の約束を。



end

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