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□恋するちょこれいと
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ツイッターよりリク頂きました。空風さんへ御礼小説です。






『恋するちょこれいと』



バレンタインデー。

男子校には無縁……なはずなのに、俺は徹夜をしてまで。





「十希夫、どうしたー?そわそわして…」

「あっ、いえ…なんでもありません…」



そう、
俺は軍司さんの為に手作りのチョコを作ってきた。

渡すタイミングを計りつつ、
なかなか渡せずにいた。

そりゃそうだ
バレンタインはそもそも女から男へ愛を贈る日であって……


男の俺から貰ったって……嬉しくないかもしれない

気持ち悪いって思われるかもしれない

まして、
男のくせに手作りなんて…


一緒にいるのにチョコを渡せず、既に下校時間になろうとしていた。


「トイレ行ってくる」

「あ、はい…!」



軍司さんがトイレに行った隙に渡せずにいるチョコを取り出して、眺めた。



「………徹夜してまで、」



自分で食べようか、なんて思ったり…

このままゴミ箱に捨ててしまおうか…なんて思ったり。



「………はぁ」

「ん、なんだ十希夫?溜め息なんかついて」


俺はトイレから戻ってきた軍司さんに気付かず、慌ててチョコをカバンに隠した。



「あっ、いえ…なんでもありません…!さ、帰りましょう」

「おう」



校門を出ると、女子高生二人組が立っていて軍司さんを見てキャーキャーと騒ぎだしていた。




「あ、あのっ…!」

一人の女の子が俺達に近寄り、口を開く。



「ん?俺に何か用…か?」

「はい…あのっ…岩城軍司さん……、」

「ん…?」


友人の女の子が「頑張れ」と小声で言うのが聞こえた。


ああ…この子……、

軍司さんのことを……


「あのッ…、これ!手作りのチョコなんですけど…よかったら………、」

「……………。」


見た目は可愛い系の小さな女の子。


軍司さん……、

どうするんですか……?





"嫌です…受け取らないで……"



俺の本音が切なく胸を突いた



「す、好きです……岩城軍司さん……、」

「………………。」


軍司さんは黙ったまま、眉間にしわを寄せて俯いていた。

不安そうに見つめる女の子。
その小さな手には可愛くてラッピングされたチョコの包み。



俺にはその時間が…痛いくらい苦しかった…


「ぐ、軍司さん……、答えてあげなきゃ…かわいそう…です…よ…?」



あ、
やべ…泣きそう……

なんで?
俺…この子を庇ってるんだ……






「あー…えと…ごめん!」

「えっ…?」

「ごめん、気持ちだけ受けとるわ……本当にごめんな…」

「じゃあせめて…チョコだけでも……」


すがる女の子に軍司さんはこう言った。




「悪いな…このあと、本命チョコを貰う予定なんだ」



「ぐ、軍司さん……!?」


女子高生達は一礼をしてその場から走り去って行った。


俺はなんだか気が抜けて、
気付いたら泣きそうになって地面にへたりこんだ。



「十希夫…?どうした?」


「あっ、あのッ……よかったんですか?本当に…」

「何が?」

「いや…あのッ…手作りチョコとか……あの子…けっこう可愛かったし………、」

「……言ったろ、」

「え…?」



「これから本命チョコを貰う予定だっ、て…」


「軍司さん……」

「なんだ?十希夫…まさか、俺にチョコ無しか…?」



俺は首を横に振って、
カバンから渡せなかったチョコを取り出した。



「軍司さん……貰って…くれますか?」

「もちろんだよ」

「…ぐ…軍司さん、好きです……」

「うん、知ってる。俺もだ…十希夫…」


軍司さんはチョコを受け取って、にこりと笑った。

それは嬉しそうに。



この人にずっとついてゆきたい

大好きで
大好きで
堪らない…


無駄にならなくてよかった、

伝わっていた、

手作りのチョコと、俺の想いが。



end

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