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□最後の告白B
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『最後の告白B』
最近、様子がおかしかった前川に半ば強姦のように犯されて嫌だというのに止めてもくれず、
俺は諦めて黙ってあいつの気の済むまで抱かせてやった。
いつもの前川じゃない…
そう感じていた。
何がそうさせた?
俺のせい?
無理矢理、何度も何度も中に欲を吐き出され俺は風呂場へ急いだ。
シャワーを浴びながら、虚しく一人で後処理をして部屋で待つ前川と何を話そうかと…考えていた。
正直、今のあいつは…何を考えているのかわかんねえ…。
シャワーを済ませて、部屋へ戻ると…
前川の姿は、なかった。
玄関へ急ぐと靴もない。
「………ヤるだけやって、帰ったのかよ…」
衣服を身に纏い、
さっきまで抱き合っていたベッドに寝そべると前川の残り香がまだ残っていて、なんだか胸が締め付けられるような感覚に陥った。
あいつの眼は楽しそうじゃない。
まるで俺を支配するかような冷たい視線。
携帯を閉じたり開いたり、
前川からのメール、着信を柄にもなく気にしていた。
「潮時かもな…」
直後に、
突然、携帯が鳴る。
ディスプレイを見ると、将五からだった。
「アキラ、今からちょっと会えないか?」
「お、おう…かまわねーけど…どうした?」
「ん…お前んちの近くまで来たから、ちょっと話でも…と思ってな。」
俺は飛び起きて、近くの公園で待つ将五の元へと向かった。
「悪いな…呼び出して…」
「いや…ひまだったし。」
「…それ、いつも付けてくれてるんだな」
「あ?ああ…お前から貰った大事なネックレスだからな!」
「……前川、嫌な想いしてんじゃねえか?」
「…え?」
将五に言われるまで気が付かなかった。
そういえば最近、
ネックレスについてなにも触れてこなかった事を…
まさか…あいつ…?
「前川…最近、元気なかったよな?」
「あ、ああ…」
「きっと、そのネックレス…俺から貰ったって気付いたんだろう…」
「…………、」
別に隠していた訳じゃない…。
ただ、
将五から告白されたことが前川にバレたら…と思うと言うに言えなくなっていた。
「将五…、実はさ」
俺は将五に前川とうまくいっていなかった事を話した。
将五は黙って俯いたまま、
口を開いた。
「…だから、俺にしとけば苦労しねーのに」
冗談っぽく笑って、
「お前が前川から別れられる訳がねーよな…」
そう呟いた。
別れる…
潮時かも、とは思っていた。
1度、距離を置くのもいい。
「将五…、サンキュ。話聞いてくれて…、あと……こんな俺を…好きでいてくれて…。」
「ははっ、俺は気がなげぇから…いつでもアキラの側にいるから。」
俺の気持ちは決まっていた。
***********
翌日、
前川を呼び出して会うことにした。
「昨日…なんで勝手に帰ったんだよ…」
「…ごめん、」
「前川…もう…いいよ、」
「え…?」
「もう………別れよう」
「………、それがアキラちゃんが出した答え?」
「ああ…」
暫く沈黙して、前川の結論を待った。
泣いてすがるのか、
潔く別れを認めるのか…
どっちを選ぶんだ…お前は。
「…、解った。アキラちゃんが決めたならそうするしかないね…」
「ああ…、」
「将五と……付き合うの?」
「……!?、ま、まさか…いや、俺は誰とも……」
「俺……アキラちゃんのこと、大好きだよ…ずっとずっと…」
知ってる…
痛いくらいに伝わる。
でも今の俺とお前じゃ…うまくいかないんだ。
「普通の仲間に戻ろう……前川、」
前川は無理に笑って、静かに頷いた。
本気じゃないくせに…
本当はすがりたいくせに…
本気じゃないくせに、俺は知らないふりをした。
ゆっくりと歩を進めて、前川の前から離れた。
嫌いになったんじゃない…
ただ、自分と向き合う時間と余裕が欲しかった。
なんとなく、このままじゃいけないと思った。
今でも好きで堪らないのに。
前川に抱かれた温もりが今も抜けずに胸を燻る。
自宅前には将五が待っていて、気づかないうちに涙を流していた俺の肩をただ黙って抱いていてくれた。
いつまでも。
end(シリーズCに続く)