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□最後の告白@
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元カノ関係で揉めている宗春に付き合ってる明は呆れ果て、将五はある決心をします。





『最後の告白@』



前川と付き合いだして、当初は順調にいってるかのように思われたが度々起こるある問題に俺は怒りと言うより、呆れを感じていた。


あいつはモテる。
とにかくモテる。

俺と出会う前に女が沢山いてとっかえひっかえしていた話は毒蛾の奴らから聞いていたし、聞かなくてもアイツの容姿をみりゃ分かる。


今日も鳴りやまない別れた女からのメールや着信。

(俺といる時ぐらい、電源切っとけ…あほ!)



「ごめん、アキラちゃん…ちょっと電話出ていい?」

「ああ」

そう言って、二人で飯を食っているのに席を立って前川は外へ出て行った。


(…たく、後腐れなくうまく別れりゃあいいのによ)

「アキラちゃん、ごめん!お待たせー」

「…別に。」

「いやー、しつこい子がいてさ…ははは!困っちゃったよ…!」


(デリカシーのないやつ…今日はもう……、)


「わり、前川…今日はもう帰るわ」

「え!え?アキラちゃん?」

「これで払っといてくれ、じゃあ」

テーブルに金を置いて、俺は店を出た。


仕方がない…と言えばそれまでだ。
モテる奴と知ってて付き合った自分を納得させなきゃならない。

でも…、
アイツは優しいから女にキツい事とか言えずに別れてきたんだろうな…

(さて、どうすっかな…これから暇だな…)



街はクリスマス一色に彩られ、小さな公園にすら僅かなイルミネーションが光っていた。


「…ん?」

帰宅途中にある公園に見覚えのあるバイク。

「将五…?」

ベンチには将五が座って煙草を吹かしていた。


「おう!将五…、」

「アキラ…」

「なにやってんだよ?」

「や…ちょっと考えごとを…お前は?ひとり?」

「ああ…うん…まあな…」

俺が言葉を濁すと将五は、すぐに俺の変化に気付いて口を開いた。


「前川…と何かあったな?アキラ…」

「……はは、お前には敵わねえな」

俺も隣りに腰を下ろして、煙草に火をつけ、最近前川が女関係でもめていることを将五に話した。


「アイツさ…俺といても、別れた女が気になるみたいでよ…。ったく、電源くらい切っとけよな…」

「まあ…未練のある女ってのは、何するかわからねーからな…自殺でもされりゃあ困るしよ…」

「ああ…分かってるんだけどよ…なんか、最近アイツといても楽しくねえんだよな…」

「………………、」


将五はゆっくりと立ち上がって、「コーヒーでも買ってくるよ」と公園内の自販機へと向かった。


(将五、気を悪くしたかな…愚痴言い過ぎたか…)


「ほら、アキラ。お前は無糖だったな?」

「お、サンキュ!」

再び、隣りに腰を下ろして将五がゆっくりと息を吐いた。




「アキラ…、」

「ん?」

「俺じゃ…だめか…」

「ん?なに?」

「俺じゃ……前川の代わりには…なれねえか…?」

「しょっ、」



何を言われているのか理解出来ず、ただ頭が真っ白になっていた。


驚いて手から落ちた飲みかけのコーヒーの缶が足元を転がる。

将五は俯いたままだった。


「冗談言うなよ」と笑い飛ばせばいいのか、

その言葉を本気に捉えたらいいのか、

気持ちが駆け引きを始めた。


やがて、
ゆっくりと顔を上げる将五の眼差しは真剣そのものだった。


「あ、わり…コーヒー…」

「アキラ…、」

「ごめんな…コーヒー…落としちまった…」

「アキラ…、」

「…………、」


あまりにも将五が本気だから。
何も言えない。

小さい頃からずっと一緒で、
俺より頭もよくて、
スポーツも出来て、
喧嘩も強くて、
女にもモテて…

将五は俺の目標だった…ずっと。

その将五の瞳は今、
俺だけを見ている。



「アキラ…好きだ、」


「…………!!」

「俺は絶対にアキラを傷つけたりはしない」

「…しょ、」


辺りはすっかり真っ暗で街灯と僅かなイルミネーションだけが俺達を照らしていた。

俺は…どうしたらいいのか、
分からずに足元に転がったら缶コーヒーをひたすら眺めていた。



「アキラ、」

「………?」

将五は立ち上がって、俺の背後に廻る。


「これ…アキラに似合いそうだな、と思って買った。」

「…ネックレス?」

背後に廻った将五は俺の首からネックレスを付けて、

「ちょっと早いが…クリスマスプレゼントだ」と言って満足そうに微笑んだ。


シルバーのロザリオのネックレス。

「俺が欲しかった…やつだ、」

「ははっ、そうか…よかった。似合うぜ…アキラ」


直後、
背後に立っていた将五が突然、後ろから俺を抱き締めてきた。


「アキラ……お前を守りたい、」

「……しょっ、」

後ろから包まれた温かい腕。

将五の匂い、
小さな頃から知っている…この匂い。


安心する、匂い。




それでも
目を閉じると思い出すのは、



前川の笑顔だった。





「アキラ……」


強く抱き締める腕、
俺はそれを突き放す事は出来なくて…

あまりに将五が真剣だから、
将五に飛び込んでしまえばきっと…今みたいに傷つかなくても済む、

分かっているのに…

分かっているのに…





「……ちくしょう、」




前川の笑顔が頭から離れねえんだよ…。



「アキラ…、」

将五はただ俯く俺の頭をぽんぽんと叩いて、再び隣りに座り煙草に火をつけた。




「………失恋もたまに悪くねえかな」

「将五…?」


ふっ、と泣きそうな顔で無理に笑う将五の顔がひどく男前だった。


「まあ…、俺は諦めが悪いから…いつまでも待つけど」

「将五…あの…っ、」

「ん?アキラも煙草吸うか…?」

「あ、ああ…おう…」


将五が差し出した煙草に火をつけて、夜空を仰いだ。





「あ、雪…」

「通りで寒いわけだわ」



将五は自分のマフラーを俺の首に回して、「風邪…ひくなよ」と笑いながら立ち上がった。


「じゃ、帰るわ…またな。アキラ…」

「まっ、待って…!」

「……ん?」

「ネックレス…サンキューな…。あとっ、コーヒーとマフラーも………」


将五は優しく微笑んで、片手をひらりと上げて手を振った。






遠ざかるバイクの音。

俺は足元に転がった缶コーヒーを拾って、ゴミ箱へと放った。





「前川……」


携帯のメール音が突然、響き渡る。

前川からのメールだった。




"アキラちゃんどこ?(・д・ = ・д・)会いたいよー!アキラちゃーん!!m(。≧Д≦。)m"




「…っ、たく…アイツ…」


なんだか悔しいから、


"探してみろ"

と返信した。





振り返ると、

そこにはもう前川が立っていて…

髪が乱れ、
汗だくになり、
息切れをしている情けない姿のアイツの姿。


「み…みつけ…た…はあ…はあ…あ、アキラちゃん……」

「ははっ、なんだその格好…お前、もしかしてずっと俺をさがしてたのか?」

「う、うん…はあ…はあ…アキラちゃぁあん……何してたの…こんなとこで…」




「…浮気。」




案の定、
ギャアギャアと騒ぎ立てる前川は「そのネックレスは誰から貰った?」だの「そのマフラーは誰の?」だの…いつもいじょうにしつこく迫ってきた。


俺は、
将五の告白を思い出しては胸を痛めた。



多分…、

今夜も前川の腕の中に堕ちてしまう気がしたから。




end

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